ecomom創刊から11年続いた人気連載「野口さんちのおうちごはん」。4月からバックナンバー企画として、過去のレシピを毎週ecomomサイトでアップすることになりました。そこで、野口真紀さんに改めて野口家の食卓のこと、ecomomで連載してきたレシピへの思いを伺うスペシャルインタビューです。(取材・文=工藤千秋 撮影=馬場わかな)

ecomomの連載は、本当においしい自慢のレシピばかり

――11年という長期連載だった「野口さんちのおうちごはん」。この連載ではどんなレシピをご紹介いただいていたのでしょうか?

野口 食に気を使うお母さんたちはみんなそうだと思いますが、やっぱりパパや子どもたちにはたっぷり野菜を食べてもらいたいですよね。ecomomのレシピでは、とにかく "旬の野菜をたくさん食べられる料理" というのを心がけて提案してきました。

連載では野口さんのお気に入りの品やライフスタイルも紹介してきました(2005年夏号より)
連載では野口さんのお気に入りの品やライフスタイルも紹介してきました(2005年夏号より)

 雑誌の企画でレシピを提案するときは、たいてい食材だったり、調理法だったりのテーマ、つまり「縛り」があるんですが、ecomomでは、わが家の食卓にのぼるような料理という大きなくくりだったので、すごく自由にやらせていただいたな、と思っています。

 縛りがない分、自由な発想で新しいレシピが思いつくし、堂々と胸を張って本当においしいものを作れたと言える気がします。1号につき4品、それが年間で4回だから、1年間に16品。私にとっても1年で16品のレシピが生まれるのは、とても自信になりましたね。

――「簡単に作れるのに、おいしい」と、読者のみなさんからも大好評でした。具体的にはどんなことにこだわったレシピだったのでしょうか?

野口 さっきも言いましたが、とにかく旬の野菜をたくさん食べられるようなレシピであることが大前提。旬の野菜って、おいしいし値段も手ごろ。その時期の体が求めている野菜でもあります。野菜8割、肉や魚2割くらいのイメージで、考えるようにしていました。

 素材やだしの持つ味を大事にしてほしいというのもあります。例えば、素材だけのうまみではもの足りないなというときは、あさり缶を使ったりすれば十分おいしくなる、とか。調味料も家に普段からあるものでまかなえるようになっています。

 料理は毎日のことなので、見た目や味のおいしさはもちろんですが、できるだけレシピは単純ですぐできるものという点も心がけました。

 子育て中のお母さんたちがすぐに真似できるように、味つけも小さな子どもが食べられる味に。大人は後から辛い味つけを調整できるようなレシピになっています。

「食べることは楽しい」。食卓は子どもの五感を刺激する場

――連載では、レシピはもちろん、野口さんちの食卓の雰囲気をできるだけお伝えしてきました。連載スタート時は保育園児だった長女のうたちゃんはこの春から中学2年生。連載途中で生まれた長男たおくんも保育園の年長さんですね。

手作りなめたけ(2008年9月号より)。すぐ作れて本当においしい、大活躍の常備菜。
手作りなめたけ(2008年9月号より)。すぐ作れて本当においしい、大活躍の常備菜。

野口 特に晩ごはんは、子どもたちと一日のできごとを話す貴重な時間なので大事にしています。うちの家族はみんな食べるのが大好き。少しずついろいろなおかずがたくさん並ぶのを喜びます。メインのほかに、すぐできるものや常備菜などを上手に組み合わせて、なるべく多くのお皿を並べるようにしています。食卓が華やぐと子どもたちのテンションも上がって、会話も弾みますね。

 最近は、長女のうたは学校や習い事で忙しくて、どうしても一緒にごはんを食べる時間がそろわないことも多いのですが、そんなときもお膳にみたてたトレーに小皿料理を並べてあげるなどの工夫をするようにしています。同じおかずでも、見た目が華やかだと、子どもの食べたい気持ちがぐんとアップ。ごはんが並んだテーブルを見て、「わー、すごい!」と喜んでくれます。ちょっとした工夫ですが、そうやって五感を刺激することが「食べることが楽しい」という体験につながるのだと思います。

ママのから揚げ(2008年6月号より)。野口さんがお母さんから引き継いだ家庭の味です
ママのから揚げ(2008年6月号より)。野口さんがお母さんから引き継いだ家庭の味です

――子どもの好き嫌いに悩むママたちも多いですが、野口さんは好き嫌いの対策はどのようにしているのですか?

野口 うちの子たちはあまり好き嫌いがないのですが、基本的に苦手な食材も小さく刻んでごまかすということはしないですね。たとえばピーマンを小さく刻んで全体に混ぜてしまうと、その料理全部がピーマンの香りや味になってしまう。苦手な食材は使わないということもしません。ごく普通に調理して、本人がイヤならよけて食べないのも仕方ないのかな、と。そういう好き嫌いも変わっていくもの。苦手な食材を使って普通に調理したものを食卓に並べながら、食べられる時期がくるのを気長に待つようにしています。

おいしい食卓は、家族の幸せなコミュニケーションの場

――春号では時短家事企画で、スピード料理のレシピをご提案いただきました。誌面で紹介いただいたほかに、手早く料理をするコツがあれば教えてください。

野口 料理のおいしさって、ちょっとしたひと手間で違ってきます。帰宅して15分しか調理にかけられないなら、前日や朝に少しだけ準備しておくと、味も手際も格段にアップします。前の夜から干ししいたけをひと晩戻したり、肉や魚をタレにつけておくだけで違いますよ。

 私のおすすめは塩豚。500gに大さじ1弱くらいの割合で塩につけておくだけ。保存もきくし、肉の水分が出てうまみが凝縮されるので、安いお肉でも高級感が出ます。野菜炒めにしてもいいし、スープにしてもいい。和洋中にアレンジ可能なので、ぜひやってみてください。

――最後にecomom読者のみなさんへメッセージをお願いできますか?

『野口さんちの365日のおかず』
『野口さんちの365日のおかず』
(1296円・KADOKAWA)
ecomom連載「野口さんちのおうちごはん」を1冊にまとめた最新刊。

野口 毎日、家族で食べるごはんを大切にして、ぜひおいしいものを食べてもらいたいですね。子どもたちが「おいしかった~!」と笑顔で言ってくれると、1日の疲れも吹き飛ぶし、お母さん自身も「今日もおいしいごはんが作れたな~」という達成感があるはず。親子の大切なコミュニケーションの場でもある食卓が、楽しく幸せな空間になるように、私のレシピを役立ててもらえるとうれしいです。

野口真紀(のぐち・まき)さん
野口真紀(のぐち・まき)
雑誌編集者を経て、料理家へ。簡単でおいしい家庭料理のレシピと、シンプルなライフスタイルにファンが多い。中学生と保育園児のふたりの子どものママ。