©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

地球環境、そして私たちの暮らしはこれからどうなるの?子どもたちの世代が生きる社会は?――そんな素朴な疑問を取り上げて、世界のあちこちで起きている市民活動を紹介したドキュメンタリー映画「TOMORROW パーマネントライフを探して」。人々の小さな行動の連なりが豊かな社会につながる、というヒントをくれるこの映画はフランスで大きな反響を呼び、セザール賞という権威ある賞も受賞しました。日本での公開にあたり、監督のシリル・ディオンさん(女優、メラニー・ロランさんとの共同監督)のお話とともに、映画をご紹介します。(取材・文/村上富美)

普通の市民が手がける環境・社会への取り組みを紹介

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 映画の発端はフランスの女優であり、この映画の共同監督も務めるメラニー・ロランさんが科学雑誌「ネイチャー」に掲載された「気候変動と人口増加が続く中、私たちが今のライフスタイルを続ければ、近い将来、人類は滅亡する」というレポートを読んでショックを受けたことにあります。

 一児の母であるロランさんは、子どもたちが生きる未来に不安を感じ、どこかに解決策がないかを探るため、新しい生き方をしている人に会おうと、世界のあちこちに出かけていきます。

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 最初に登場する街は米国・デトロイト。かつて自動車産業で栄え、その後、日本車との国際競争などで衰退したこの街では今、都市型農園が続々と増えています。実は工場閉鎖、人口減少など、街の衰退とともにスーパーマーケットが閉鎖し、住民は新鮮な食料を手に入れることができなくなりました。そこで自分たちで栽培に挑戦したのです。

 さらに映画は英国で盛んな、公共の土地に野菜を植える「みんなの菜園」運動や、エネルギーを使わない自転車の利用に積極的な北欧の街、太陽光、風力、地熱など再生可能エネルギーを積極的に取り入れるアイスランドやフランスなどの国や地域を紹介していきます。

© Romain Guédé (URL:www.romainguede.com)

 ロランさんと共同でこの作品を監督したシリル・ディオンさんに撮影場所を選んだ理由を聞いてみたところ「観客の目から見て、インパクトがあり、視覚的に美しい場所を選びました。デトロイトは都市が崩壊し、ゴーストタウンのような印象でしたが、人々が集まって食べ物を作り、挑戦していました。一方、自転車の利用が進むコペンハーゲンやストックホルムの街並みは、映画の画面として美しいと思って撮影していました」という答えが返ってきました。

 実際に映画を見ると、ちょっとした世界旅行に行ったような気分にもなります。

フィンランドの学校を見て「怒りを覚えた」

 映画には世界のさまざまな地域で進む活動が紹介されます。前述した農園づくりなどの事例のほか、地元の経済を活性化させるために英国ブリストルで導入した地域通貨、またフィンランドからは、子どもたちの将来のために、個性に合わせて学び方を教える小学校の取り組みが紹介されます。農業、経済、エネルギー、教育、と事例の内容は多彩です。

 特に印象に残った事例をディオン監督に尋ねたところ、その答えは「フィンランドの学校」でした。

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「フィンランドの学校を見て、とても怒りを覚えたのです。というのも僕は学校というのはつまらないところだと思って、嫌いだったのです。幼いころ、こんな学校で学べていたらよかったと思いました。それほど、衝撃だったのです」。

 確かに無限の可能性を持つ子どもたちのために、できるかぎり教育の質と機会は高めたいところです。

 「もうひとつ映画を作って感じたのは、豊かに暮らすために、特に多くのお金は持たなくてもいいのではということです。野菜を育てたり、地域の人々と一緒に活動したり、自然にかかわりながら暮らして、みな満ち足りているように見えました。特に大事なのは、人とのかかわりです。もっとコミュニティの中で、人との関係を築いていくことが豊かに暮らしていくために、とても重要だと感じました」(ディオン監督)

 実際に、映画には活動に参加する市民や、それを取りまとめるリーダー的存在の人物が多く登場しますが、誰もが楽しみながら活動している様子が、スクリーンから伝わってきます。

グローバル経済と地域社会の“いいバランス”が必要

 これまで経済の中では、大量生産によってコストを抑えて安価な製品を消費者に提供し、豊かさを実現するという流れがありました。そこで企業の活動はより大規模に、グローバルになってきました。一方、映画「TOMORROW パーマネントライフを探して」で紹介されている事例は、地域での市民活動が支える、地域密着・住民参加型の事例が中心です。

 ディオン監督は、グローバルな動きを見直し、もっと地域に目を向ける必要があると考えているのでしょうか。

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 「重要なのは、いいバランスを保つことだと思います」とディオン監督。「2016年の米国大統領選挙戦では、共和党のトランプ氏も、民主党のサンダース候補もどちらも、行き過ぎた自由貿易は規制すべきだ、と主張し、支持を受けていました。もちろん、自由貿易はある程度必要なのですが、すべての世界が同じような暮らしになっていくのはどうでしょうか。僕はもう一度、自分たちの地域を見直し、地域にあわせた暮らし方を考えていく必要があると思います。これまでは自由貿易を推進していた国の人たちが、地域ごとに違いがあっていい、バランスが必要と言い出したことは大きな変化だと思います」

よりよい生き方の参考になる映画を作ったと思っている

 映画「TOMORROW パーマネントライフを探して」に登場する人たちの穏やかで満ち足りた暮らしぶりは、見ていてうらやましくなります。自分にも何かできること、参加できる活動はないか、と感じさせます。

 ディオン監督は言います。「僕は今回、エコロジー映画を作ったつもりはないのです。むしろよりよい生き方を求めるための映画を作ったと思っています。人々の危機感をあおるためなら、もっと危機的状況を見せる映画を作る方法もあります。けれど、何が間違っているのかを見せるのではなく、何ができるか、人々が集まれば大きな力を発揮できることを描きたかったのです」

 実際に、私たちは地球の環境問題解決のために日々、努力していく必要があります。ただ、それと同時に、豊かな気持ちで暮らしを重ねていくために、自分が住む地域の中で人々と関わりながら取り組めることがありそうです。「未来はある!」と思わせてくれる映画です。

「TOMORROW パーマネントライフを探して」

東京都渋谷区シアター・イメージフォーラムで公開中(2017年1月27日までは上映、その後は未定)、全国順次公開

第41回 セザール賞ベストドキュメンタリー賞受賞
監督:シリル・ディオン、メラニー・ロラン(『イングロリアス・バスターズ』『オーケストラ!』)
出演:シリル・ディオン、メラニー・ロラン、ロブ・ホプキンス、ヴァンダナ・シヴァ、ヤン・ゲールほか
2015年/フランス/120分/シネスコ/カラー/原題:DEMAIN /日本語字幕:丸山垂穂/
協力:ユニフランス・フィルムズ/配給:セテラ・インターナショナル/

公式サイト
www.cetera.co.jp/tomorrow

(2016年1月4日)