大人気絵本作家のヨシタケシンスケさん。最近、家族や子どもを描く上で悩んでいることがあると言います。家族も子育ても「多様化」の時代、マニュアルや共通解がない中で、子育てもブレるのは当然。だからこそ子どもに伝えておきたいことについて、教えてもらいました。

一つのコンセプトに従って子育てするのは無理

 子どもというものは、当たり前だけどみんな見事にバラバラです。僕は男の子2人の父親なんですが、同じ親から生まれて性別も同じなのに、それぞれ特性があって、同じことを言っても、反応は全く違ったりする。だから子育てって、一つのコンセプトに従ってやろうとするのが、そもそも無理なんですね

 僕自身はかなり個性の異なる4人きょうだいで育ちましたが、うちの母親はそのあたりを上手にやっていたように思います。以前にもこの連載でお伝えしましたが、うちの母親の教育方針は「その子なりにする」でした。それを知ったとき、「すごい便利だな」「ラクでいいな」と思ったのと同時に、子どもながら、なんだかほんのりとうれしかったんです。「あなたは、それでいいんだよ」と認めてもらえたような気がしたのかもしれませんね。

 学校で「その子なり」の教育をするのは、実際なかなか難しいと思います。1クラスに30~40人もいたら、どうしたって規則や「決まったやり方」をつくる必要が出てくるでしょう。

 となると家庭で、どこまで「その子なり」を採用してもらえるかが、子どもにとってはとても大切なんですが、親にしてみれば大変です。一番大事な部分がマニュアル化できないんですからね

 しかも、今の時代は家族そのものが多様で、メンバーの誰がどんなふうに子どもとかかわるかも、家庭によってずいぶん違う。昔のように家族とはこういうもの、お母さんはこうするもの、子どもとはこうあるもの、という誰もが共通してイメージできるものがなくなっています。

 そんな中で今、みんな揺れていると思うんですね。絵本作家である僕も、最近、家族をどう描くかに、悩むことがあります。