子どもは親がブレていることを察知している

 もうブレることは避けられないのだから、子どもには、「これからもずっとブレ続けるから、あなたはその中で育っていく、そのつもりでいてね」と了解を取っておくといいのではないでしょうか。

 もちろん、子どもは親がブレブレであることをちゃんと察知しています。で、「このまえはこう言ったじゃない」とか、「お兄ちゃんのときはこうだったじゃない」などと痛いところを突いてくる。そんなときは、「はい、その通りです」と認めてしまうしかないでしょうね。たいてい子どもの言う通りですから。

 子どもが「親を100%尊敬している」なんていうのも、あり得ないと思います。一緒に生活していれば、「うちのお父さん、ここはすごいけど、ここはダメだなあ」となるのが普通なんです。それでいいんじゃないかなあ。10割のうち2割尊敬してもらえたら御の字、3割尊敬なら十分、という感じでしょうか。子どもから自分のダメなところを指摘してもらえる関係は理想だと思います。

 僕はサラリーマンが勤まらず、就職したゲーム制作会社も半年で辞めて、逃げて逃げて絵本作家になることができました。だから、「イヤなことにぶつかったら我慢しないで逃げなさいよ」としか言えない。親は自分の武勇伝じゃなく、失敗談をたくさん教えてあげたほうがいいと思いますね。「僕にもたくさんできなかったことがあるんだよ、だから君も失敗しても大丈夫だよ」と。できないことを言うのも、親の仕事。そして、子どもに価値観を押し付けちゃって憎まれるのも、親の仕事。

 「君を育てている親は完成された人間ではなく、まだまだ未熟なんだよ、でも頑張るからね、よろしくね」。これさえ分かってもらえれば、子どもはきっとちゃんと成長していくものではないかなあ。

 今は、時代の変わり目というか過渡期なんだと思います。昔は、何かにつけてもう少し分かりやすい正解がありました。それがあったことで当時の人は苦しんだわけだけれども、今の時代には「みんなにとっての正解」がないことが苦しみを生んでいます。でも、選択肢が広がった分、いいこともあるはずで。たくさんの中から自分たちが選んだものを、「これが自分たちの幸せだ」とファイル名を書き換えて、誇りを持っていればいいと思います

取材・文/平林理恵 写真/小野さやか