人よりできないからこそ、できることには責任を持ちたい

 僕は絵本作家ですが、自分で色を付けるのも下手だし、大きな絵を描くのも苦手。ファンタジックな物語をイチからつくったこともありませんでした。

 できないことだらけだったけれど、それらを全部引き算した後に残る「自分だからできること」ってなんだろう? と突き詰めていった結果、他の人とは違う創作スタイルができあがっていったんです(*編集部注:ヨシタケさんの作品の原画はすべてA4コピー紙に収まる小さなサイズに0.3mmのペン先で描かれた線画。色付けは、装丁家など他の専門家に任せることで知られています)。

 ハッキリ言って王道からかけ離れたスタイルですが、だからこそ珍しがってもらえて、たくさんの方に作品を届けられる道筋ができたという経験があります。不器用な自分を認め切ったから開けた道で、もしも僕がなんでもそつなくこなせる器用な人間だったとしたら、絵本で食べていけるようにはならなかっただろうなと思います。

 人よりもできないからこそ、「自分ができること」に対しては人一倍責任を持ちたいと思っていますし。つまり、「できない」はチャンスを引き寄せる出発点なのだと実感しています。

ヨシタケさんの手帳に描かれたイラストメモ。「子どもを前後に乗せたママの自転車が軍艦みたいだった」ことから描いたそう
ヨシタケさんの手帳に描かれたイラストメモ。「子どもを前後に乗せたママの自転車が軍艦みたいだった」ことから描いたそう

焦りながらもゆったりと構えたい

 もう一つ。いろんなアプローチで探っていっても、なかなか子どもの才能が開花しないことはあると思います。というか、そのほうが圧倒的に多いはずです。うちだってそうです。

 「子どもの才能を探す旅」なんて、言ってしまえば、全部親の自己満足の悪あがきでしかないですから、体力が尽きて飽きるまでは頑張る。気が済むまで、焦ればいいんじゃないかなと思っています。

 ただ、その時に親側が「ごめんね。こっちが気が済むまで付き合ってね。この習い事、あと3回だけ続けてみてくれない?」という態度でいるのか、「すべてあなたのためにやってるんだよ。感謝しなさい」と押し付けてしまっているのかでは大違い。

 焦りながらもゆったりと構える、そんな心持ちでいたいものですね。そう思って、僕は自分の仕事場のパソコンに、自分で描いた小さな絵を貼ってるんですよ。でっぷり太ったお金持ちのおじさんが椅子に体を沈めて「まぁ待ちたまえ」と言っている絵(笑)。子育てや仕事をしながら、ままならない日常に焦ったりいら立ったりする自分に気づくたび、おじさんを眺めているんです。

取材・文/宮本恵理子 写真/小野さやか