大人気絵本作家のヨシタケシンスケさんに、作品に込めた思いや、自身の子ども時代、二人の息子の子育てなどについて、自由に語っていただくこの連載。2回目は、習い事や勉強などで、親がついやってしまいがちな「子への期待」について。ヨシタケさんは、迷いながらジタバタする親の姿を子に見せるのも、1つの方法だと話します。

親の淡い期待を、子は見事に裏切ってくれる

 僕も2人の子どもを育てる父親として、日々いろんなことにモヤモヤし、「あーでもない、こーでもない」となんとか着地点を見つけながら過ごしています。

 子育てはままならないもので、親が「こうだったらいいのにな」という淡い期待を子どもは見事に裏切ってくれますよね。「子どもの頭をよくしたいから、頭がよくなりそうな絵本を選ぼう」なんて考えがちだけど、子どもはそんなふうに調子よくいくことはまずない(笑)。勝手に自分から賢そうな本を選んで吸収していく子もいれば、外遊びが大好きでいくら薦めても本を読まない子もいる。結局、その子の興味が向かなければ、何も身に付かないのだと気づくまで、親はジタバタを繰り返してしまうわけですが……。

絵本作家のヨシタケシンスケさん
絵本作家のヨシタケシンスケさん

 当たり前のことだけど、子どもの適性は一人ひとり違う。僕の場合は、自分の母親がそのあたりのやり過ごし方が上手な人だったんですよね。僕は4人きょうだいで、みんな個性が違ったんですが、小学校の家庭訪問での先生と母親とのやりとりがいまだに印象に残っていて。「ヨシタケ家の教育方針はなんですか」と先生から聞かれたのに対し、うちの母親は「その子なりにします」とだけ答えて終わり。それを聞いて、子どもながらにほんのりとうれしかったですし、僕自身が親の立場になって気づいたのは「あの方針は楽チンだし、便利だな」と。

 その子にとって何が向いているのか、何をしていたら機嫌よくいられるのか。「子どもと興味の相性」を見つけて道を決められるのが理想だと思います。

 でも一方で、つい期待しちゃう気持ちも分かるんですよね。