ワンオペ育児、男性育休取得率や女性管理職比率の低さ……職場や家庭で、男女間のギャップを感じる瞬間は少なくないでしょう。世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダー・ギャップ指数」(男女平等指数)で、日本は121位(調査対象153カ国中)と、過去最低の順位を記録しました。あなたは、この結果をどう受け止めますか。次世代の子どもたちを育てる親にできることとは。DUALならではの男女両面からの視点で識者たちに意見を聞いていきます。

今回は、上智大学法学部教授で、ジェンダーと政治などを専門とする三浦まり先生に聞きました。

 今回の121位という結果は、昨年からある程度予測できていました。ジェンダー・ギャップ指数の調査結果を発表している世界経済フォーラムは、リーダー層の女性比率を重視しています。そこで問題になったのが、閣僚の女性比率。最新の閣僚(男女比)スコアは2019年1月の結果ですが、その時点で日本には女性閣僚が一人しかいませんでした。それが今回のランキング結果に大きく響いています。

 これが、3人ないし5人いれば全く違った結果になっていたでしょう。閣僚の男女比スコアが2年に1回しか更新されないので、来年のジェンダー・ギャップ指数も順位はさほど変わらないと思います。逆に再来年はスコアを伸ばせるチャンス。閣僚の女性比率は一気に改善できる部分でもあります。閣僚の任命権は首相にあるわけですから。過去に5人任命していた時代のことを考えれば、首相のやる気次第で伸ばせるわけです。

2019年1月時点で日本の閣僚の中に女性が1人しかなかったことがランキングの低さに大きく響いた
2019年1月時点で日本の閣僚の中に女性が1人しかなかったことがランキングの低さに大きく響いた

 中長期的には、女性閣僚の比率を上げていくためにも、女性議員比率に目を向ける必要があります。女性議員比率は選挙のタイミングでしか更新できませんが、日本はここ数回の選挙で10%前後で低迷しています。他国は女性議員比率を上げているため、ここが変わらないとランキングも落ちますし、女性閣僚の人数増も見込めません。

 トップが変わらないと女性比率が増えないのは、ここ数十年の経験則からも明らか。これは政治に限らず企業などの経済分野も同じです。他国では、トップがリーダーシップを発揮して、女性比率を半分に近づけています。日本にも「女性活躍」というムードや空気は広がりつつありますが、それを裏付けて結果に反映させるためには、意思決定のポジションにもっと女性を入れていく必要があります。できない言い訳を探すのではなく、どうしたら結果を出せるのかの知恵を絞るべきではないでしょうか。

 女性議員比率についても、男性議員が引退して空いた選挙区に女性を積極的に擁立するなど、打てる手はあると思いますが、それを実行していない現状があります。特に最大議席数を獲得している党が女性を増やそうとしなければ全体の比率は上がっていかないので、危機感がないのが大きな問題だと思います。

 私たちは有権者としては、女性候補に自分たちの声を届けることも大切です。女性の問題や経験には、女性議員が敏感に反応しています。また、現状では、女性の政界進出には相当の覚悟が問われるものです。その上で立候補しているということは、よほど強い思いや実行したい政策を持っている可能性が高いわけです。女性候補者が選挙で善戦するようになると、政党は女性をもっと積極的に擁立するようになります。その動きを作り出すのも、有権者の役目です。

 教育機関も変わらなければいけません。リーダー層を輩出する傾向の強い、いわゆる難関校の学生の女性比率が少ないのは大きな問題です。現時点で少ないということは、将来的なリーダー層の増加もしばらく見込めないことを意味します。東大はおよそ2割で早慶も3割台。先進国のエリート大学では男女半々が当たり前となっていますし、高等教育全体を見れば、女子学生の比率の方が高いのが先進国の実情です。つまり、日本はかなり特殊な状態にあるのです。しかもここ20年近く大きく変わっていないという事態を深刻に受け止める必要があると思っています。教育機関が女性差別に向き合ってこなかったツケが、リーダー層の女性格差に出ている、ということだと思います。

上智大学法学部の三浦まり教授
上智大学法学部の三浦まり教授