海外に目を向けると、男性育休が盛んなスウェーデンでは、平日の昼間の公園はパパたちであふれています。ラテを片手に井戸端会議をするパパたちは、「ラテダディ」と呼ばれているそうです。海外視察先でそんな光景を目にし衝撃を受けた日本のある企業が、対象となる男性社員に最初の1カ月有給で育児休業制度を整備したという話もあります。

 欧米の男性と日本人男性には、「転職」に対する意識にも差があります。欧米の男性が、たとえ大企業を退職するとしても、自分のやりたいことができるのならステップアップだと捉えるのに対し、日本人は転職自体に抵抗がある人も少なくない。これは雇用の捉え方の違いです。

 日本企業では、年功序列の給与体系が長く続いてきました。また、江戸時代に幕府が参勤交代で大名に徹底的な忠誠を試してきたような、家族を犠牲にしてまで会社に尽くす「自己犠牲の精神」があります。企業の経営層の中には、高度経済成長期に自己犠牲によってお金を稼いできた人たちもいるでしょう。そうしたことが、働き方改革を立ち行かなくさせている一因になっていることは否定できないのです。

 男性にとっても女性にとっても、子どもに必要とされ、子どもの人格形成に向き合える時期は限られています。子育ては、私たちに与えられた成長のプロセスでもあります。自己犠牲によって放棄したり、無視したりすべきものではありません。

次世代の新たな価値観が、ジェンダーギャップを埋める

 連載「日本のSDGs推進は『ジェンダー平等』がポイント」でもお話しましたが、「ジェンダー平等」「女性の社会進出」は、日本のSDGsを促進する起点です。男女の就業格差が解消されない現状では、経済、社会のすべてが停滞していると言っても過言ではないのです。

 私は日本のジェンダーギャップを解消するポイントの一つは、一人ひとりがどのくらい「自己表現」をできるか、そしてそれを周りが許すかということだと思っています。それには現在、プライベートで行っているSNSなどでのシェアや発信を、組織内でもできる風土が大切です。「自由に何でもできる」と思えることは、自分らしく働く安心感にもつながります。

 その点、今の20代の人たちが副業や複業を当たり前と考えていることには希望を感じます。別の価値観に触れられるグループや居場所を確保できれば、一つの職場に固執する必要がなくなり、自己犠牲を強いる必要はなくなってくるでしょう。日本人の、特に、男性の意識を変える大きなきっかけとなるような気がしています。

取材・文/武末明子 写真/PIXTA