ワンオペ育児、男性育休取得率や女性管理職比率の低さ……職場や家庭で、男女間のギャップを感じる瞬間は少なくないでしょう。世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダー・ギャップ指数」(男女平等指数)で、日本は121位(調査対象153カ国中)と、過去最低の順位を記録しました。あなたは、この結果をどう受け止めますか。次世代の子どもたちを育てる親にできることとは。DUALならではの男女両面からの視点で識者たちに意見を聞いていきます。

今回は法政大学キャリアデザイン学部教授の武石恵美子さんに、主に「経済」分野からの分析と今後の課題を聞きました。

「昇進が遅い」という日本特有の仕組み

 この取材の依頼が来たとき、私は「目新しいコメントができる自信がない」と返事しました。なぜなら、10年前くらいから状況がほとんど変わっていないからです。むしろ、2018年の110位、2017年の114位から後退している。日本も手をこまねいているわけではありません。ただ、他の国が進むスピードに全く追いつけていないのです。

 ジェンダー・ギャップ指数の指標となる4分野のうち、「政治」に続いて順位が低いのが「経済」分野です。詳細項目を見ると、「管理職の男女比」の順位が131位と低く、スコアも0.174と低いのが目立ちます(1に近いほうが平等性が高く、全体平均は0.356)。また、「専門職や技術職」の順位も110位で、スコアも全体平均より低く、男女の職域分離の大きさを示しています。

管理職比率と、技術職・専門職の男女不平等が目立った日本。画像はイメージ
管理職比率と、技術職・専門職の男女不平等が目立った日本。画像はイメージ

 国内の女性管理職の比率は、10年前に比べれば上がっています。女性活躍推進法もできましたし、企業もさまざまな方法で取り組んでいます。ただし、人材を育成して管理職に登用するには時間がかかるので、すぐに比率を上げられるわけではない。このため海外のスピードに追いつくのが難しいのです。

 日本の雇用システムの特徴として、一般的に男女とも昇進が遅い、という点が指摘されています。海外では、能力のある人を早期に選抜して育成しますが、日本は長い期間横並びで競争させて、「40代で課長」というのが一般的です。そうなると、そこまでの20年間の仕事のさせ方や異動のさせ方が重要になってきますが、女性は20~30代にライフイベントが重なることもあり、男性と同じ土俵で競争することが難しい状況があります。急に女性管理職を増やせといわれても人材が育っていない、という背景はあるでしょう。

 昇進が遅いという日本特有の仕組みにより、優秀な人材が賃金の高い海外に流れるなどの弊害も生まれています。国際競争力という面ではマイナスなので、この仕組みは変えていかなくてはならない。ただしすぐに変えるのは無理ですから、現状の仕組みでも女性のキャリアがきちんと形成されるようにしていかないといけません。企業は、その努力を怠ってはいけないと思います。

 繰り返しますが、日本の女性の管理職比率は少しずつ上がってきてはいます。ここで取り組みをやめたらますます順位は落ちるばかり。やっぱり日本はダメだと全否定するのではなく(実際はダメですしスピードは遅いんですが)、結果が出るまでには時間がかかるのだと、少し長い目で見なければならないと思います。