育休男性の「経験してみたらなかなか良いものだった」が増加

 こうした現状を打ち破るためには、「男性の育児休業取得の義務化」は一つの手だと思います。実際、日本の企業において、男性育休100%を進めている企業が増えてきました。制度の押しつけに対して反発する人はいるかもしれませんが、子どもが生まれたら男女ともに休みを取るという「強制ギプス」をはめて生活してみる人を増やしていく。男女差があった統計数値を変えにいくというチャレンジは企業風土や働き方を変えるという効果が実際に出ています

 そして無理やりだったその「強制ギプス」も、経験してみたらなかなか良いものだった、という男性は増えています。100%推進している企業の社内アンケートをたくさん見てきましたが、経験した結果、ネガティブな感想を抱いている人は全体の2割もいません。とはいえ、こうした企業のチャレンジはまだまだ過渡期です。育休取得率100%といっても、取得期間にまだ大きな男女差があります。

 ジェンダーギャップ解消に向けてのあるべき姿は、例えば夫婦が育休を半年ずつ取得する形でしょう。子どもが生まれたら男女共に育休を100%取得し、期間が半年であれば、これに関する統計的差別は解消に向かっていくでしょう。それを促進する形で、法定の育休給付金は夫婦で半年ずつ取るともっとも給付金がもらえる仕組みになっているので、利用しない手はありません。

 大臣が男性育休を取得するかしないかが話題になっていますが、そうした話題も個々人が男性育休について考えるきっかけになるので、いいことかなと思います。どの立場の男性たちも育休を取りにいこうとしている風景が大切だと思うからです。

 現在、イクメンという言葉が浸透してきたとはいえ、6歳未満の子どもを持つ夫の育児・家事行動者率は、共働き家庭でも3割ほどです。言い換えれば約7割は育児も家事もまったくしていないという状態です(社会生活基本調査2016)。していない7割の人から見れば3割は少数派で、「周りのみんなが育児をしてないから、自分もしなくていい」と思うかもしれません。

 そこで、大臣が育休を取る、男性育休を国が推進している、企業でも推進を始めているというニュースが頻繁に飛び交うようになる。企業は制度を作るだけでなく、それを周知するためにトップからメッセージを発信したり、人事部から対象者へ個別メッセージをしたり、未取得者へ督促したりする。自分の周囲でも育休を取る人が増えてきた。大臣だけでなく、どの立場の男性たちも育休にチャレンジしている。そして男性育休が増えていくと、「女性がより仕事にコミットできる」「男性が早く帰って子育てができる」という風土の醸成につながり、これまで男性育休推進の障壁となっていたさまざまな課題が解決に向かい始め、ジェンダーギャップが解消に向かっていく。

 こうした日常風景が変わってくれば、121位の世界が、違うものへと変わっていくのではないかと信じています。

文/塚越学 イメージ写真/PIXTA



塚越 学(つかごし・まなぶ)
東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス チーフコンサルタント

塚越 学(つかごし・まなぶ) NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。イクボスプロジェクト・コアメンバー。男 女共同参画・働き方改革・管理職改革に関する講演・ワークショップ・コンサルティングで数多くの実績。「育児&介護を乗り切るダイバーシティ・マネジメント イクボスの教科書」(日経BP)監修などメディア掲載・出演多数。