男性育休を推進できる社会は課題が解決に向かっている
ジェンダーギャップは、男女の数値にギャップがあることで生じます。例えば、職場において男女で差が顕著に出ているものは何でしょうか? 役職・管理職比率、勤続年数、労働時間、有給休暇取得率や短時間勤務制度利用率なども男女差があるかもしれません。その中でも育休については、取得率の男女差が非常に顕著です。もはや日本の法定における育児休業制度や育休給付金は世界でも最高レベルにまでなっているにもかかわらず、いまだ男性育休取得率は6.16%という低水準になっています。
なぜなら、男性育休推進を10年近くやってきた私の肌感覚では、男性育休推進を行うときの障壁は、日本の課題が複雑に絡み合っていることにあるからです。家庭や職場における性別役割分業意識、昭和から引き継がれてきた家族像や夫婦像、年功序列や終身雇用といった日本的経営の残存、男女賃金格差、キャリアロス・スキルロス問題、人材不足時の代替要員確保、無意識の偏見、子育てにおける母性神話などです。男性の育休推進ができるということは、これらの課題の多くが解決に向かっていることを示していると私は考えています。
さらに、両立支援だけの側面であれば、育休を取るか取らないかは、取りたい人が取れればそれでよいという考え方になりますが、ジェンダーギャップの観点からいけば、女性が育休取得率100%であれば、男性も100%取得する必要があります。というのも、男性が育休を取らないことが、実は男女の格差が生じる原因にもなっているからです。専門用語では、統計的差別という言い方をするのですが、その個人が属する平均的な行動を基に、その個人に不利な判断をすることです。
例えば「統計的に女性の育休取得率100%で、男性は0%」⇒「子どもが生まれるタイミングで休む女性と休まない男性なら、休まない男性に、より重要な仕事の機会を多くしよう・評価は高めに昇格しやすくしよう」ということ。統計的にそうなのだから、合理的な判断だと考えがちな統計的差別ですが、そもそも統計数値を変えにいく努力をしないと、統計的差別を回避することはできなくなり、多様な人材活用を阻害することが分かっています。
例年ジェンダー・ギャップ指数で上位に入っている北欧諸国では、男性の育休取得率は女性に近く、その結果、男女の格差も小さい。男女ともに同じような比率であれば、このような統計的差別は起こらなくなっていくといえるのです。