夫を通して企業や社会と戦わざるを得ない状況

 今回のジェンダー・ギャップ指数は「政治」と「経済」の分野で女性の進出が進んでいないことが順位を下げる要因でした。一方、「教育」と「健康」は比較的平等性が高いという結果が出ている。これは、健康や教育の機会がほぼ平等であるにもかかわらず、社会に出た後の経済活動や政治活動で女性が不利な状況に置かれてしまう、という状況の表れだとも見て取れます。もはや国を根本から変えるくらいの改革がされないと、順位を大きく上げることは難しいのかなと思います。

 日本の経済も企業も、やっぱり中心は男の人が回していますよね。私、連載でも言いましたが、どうしてこんなに夫に腹が立っているのかなと考えると、「夫を通して企業や社会と戦わざるを得なくなっている」からなんです。それがキツイ。みんな定時に帰って育休も取れて女性閣僚が増えたら、弱い立場の方も暮らしやすくなるんじゃないかなと思うんです。でもそれは、声を挙げなければ変わらない。

 以前、ある小説を書くために大正時代に富山県で起こった米騒動(米の価格急騰に伴う暴動事件)について調べたのですが、この騒動で立ち上がったのは、生活の困窮に直面した女性たちだったそうです。今回の121位も、それに相当すると思います。私たち、立ち上がってもいいんじゃないかな。

息子には家事を教えるつもり

 現状のジェンダー意識を次世代に持ち越さないために、子を持つ親として何ができるか。私は2歳の男の子を育てていますが、息子には家事を教えようと思っています。私自身そんなに家事が得意じゃない。夫もです。三人一緒に上手くなっていかないとダメだと思います。

 また、男の子を育てる親向けの育児書には、必ずといっていいほど「男の子は立ててあげなきゃいけない」と書いてあるんですが、なぜ男の子だけ? 私は「男の子だから○○」という考え方はしたくありません。うちの子は優しくてマイペースで、保育園では気の強い男の子によく泣かされていますが、だからといって「男らしくない」「もっと堂々としろ」とか言うのは絶対にやめようと心がけています。

 ジェンダー・ギャップ指数の話に戻ると、今回の調査の1位はアイスランド、2位はノルウェーでした。121位の日本から見ると、進んでいる海外の事例が、まねのできないファンタジーのように思えるかもしれません。でも、明治時代の日本だってそうだった。歴史の教科書に出てくる明治の偉人たちは海外に行って、男性と女性が対等に話していることや、夜に街灯がともっていることに驚き、優れた点を取り入れようと必死で国を変えた。日本の良さって、もはやそこに尽きると思うんです。海外の良いところをまねして、さらに進化させることも、きっとできる。そこだけには可能性を感じています。

構成/久保田智美(日経DUAL編集部) 写真/洞澤佐智子