これまで「親たちへ 私がひきこもった理由」と「子どもがひきこもりに そのとき、親は……」の2つの連載で、ひきこもり当事者と親の話を紹介しました。この新連載では、支援者や識者などに「ひきこもり」を社会全体で受け止めるためのヒントを聞きます。今回は、娘の不登校をきっかけに30年以上、当事者と親の悩みに寄り添ってきた、伊藤正俊さん(「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」共同代表)に、社会と親ができることを聞きました。

不登校は「寂しかったから」 親の苦境を反映

 伊藤さんは長く山形県米沢市で牛乳販売店を営んできました。現在は息子に店を譲り、ひきこもり当事者と親を支援するNPO法人を運営しています。

 すべての始まりは約30年前、当時小4だった次女が3年間、不登校になったことでした。登校時間になるとトイレから出られなくなり、微熱や腹痛を訴えるようになったのです。いじめなどの明らかな原因は見られませんでしたが、生真面目な次女には「はみ出してはいけない」というストレスが積み重なっていたのではないか、と伊藤さんは推測します。

 「私は自宅が職場で、子どもたちと接する時間も多かった。PTAの役員も引き受け、教育熱心な親だと自負していましたが、足元が崩れるような思いでした

 伊藤さんは、娘を学校に行かせようと相談機関を回り「最後は神様のところにまでいきました」。しかし、ひきこもり・不登校の家族会に参加したり、いじめ自殺の記事を目にしたりするようになって、次第に「学校に行かなくてもいいよ」と心から娘に言えるようになりました。

 卒業式にも出席できなかった次女でしたが、「中学には行く」と言い出しました。そして入学後は部活や生徒会活動に熱心に取り組み、高校、大学も卒業。現在は子育ての傍ら塾を営み、不登校児を受け入れています。「中学へ行くと自分で決めたからこそ、やり遂げられたのでは」と、伊藤さんは話します。

 彼女が中3のころ、伊藤さんは「どうして学校に行けなくなったの?」と聞いてみたことがあります。

次ページから読める内容

  • 親の「ねばならない」を受け止めることが苦しい
  • 特別な存在ではない 誰にでも起こりうる
  • ひきこもりの人に、「何もない」場所を提供

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