小中学校時代でのいじめなどがきっかけで不登校になり、そのままひきこもると、教育機関のサポートが途絶えた後、数十年もの間、支援につながれなくなってしまうことがあります。求められているのは、関係者が連携する「地続き」の支援です。ひきこもり支援について、先進的な取り組みをしている自治体の支援担当者などが登壇したセミナーから、行政支援の在り方を考えました。

※この記事は、鉄道弘済会が7月3、4日に開いた第57回社会福祉セミナー「『ひきこもり』と社会福祉」の模様を再構成しました。

小中学校時代の不登校がひきこもりのきっかけに

 「小中学校でのいじめなどで不登校になり、通信制高校も中退して社会とのつながりが途切れると、30年後に親の介護の時期が来るまで、支援と関わるタイミングが失われてしまうことがあります」

 大阪府豊中市の社会福祉協議会で、ひきこもりや生活困窮者支援に当たる勝部麗子さんはこのように語ります。

 勝部さんらが支援する人の中には、小中学校時代の経験をきっかけにひきこもった若者が少なくありません。同市は転勤族が多いため、子どもが転校先になじめず不登校からひきこもるケースも見られるそうです。

 「子どもは、親の無言のプレッシャーや期待を感じ取ってしまうもの。それに応えられないことに、苦しくなってしまう子もいます」と、勝部さん。支援に関わった若者の中には、全国トップクラスの大学にこだわって6浪した人や、司法試験に挑戦し続けるうちに年を重ねてしまった人もいるといいます。

 「いい学校」から「いい会社」に入れば経済的に自立でき、安定した生活が約束されていた親世代に対し、子ども世代の生きる社会は非正規雇用も拡大し、ドロップアウトのきっかけが至る所に隠れています。勝部さんは「親が想定する社会と、努力だけではどうにもならなくなっている社会のギャップが、ひきこもりを生む一因ではないでしょうか」と話しました。

 また、家庭が困窮し、親が子どもを学校に送り出したり勉強を見てあげたりできず、子どもが学校に行かなくなるケースも多いといいます。「この場合、子どもは学習の機会を得られず、貧困も連鎖しかねません」とも、勝部さんは心配します。