コロナ下の閉塞した家族関係や社会情勢が、女性たちの「生きづらさ」をさらに深刻化させているのではないか――。そう懸念しているのは、「ひきこもりUX会議」共同代表理事の林恭子さんです。UX会議は2016年から都内や全国各地で「女子会」を開き、これまで注目されてこなかった女性のひきこもりの存在を世の中に伝えてきました。不登校とひきこもりの経験者でもある林さんに、母娘関係や女性のひきこもり、コロナ下で深刻化する生きづらさなどについて聞きました。

女性のひきこもり当事者はいない?

 「ひきこもりUX会議」共同代表理事の林恭子さんは、自治体の職員から「女性のひきこもりは、うちの地域にはいません」と断言された経験があります。内閣府が過去に実施した調査では「ひきこもり」の6~7割は男性、という結果が出ており、世間でもひきこもりというと、まず男性をイメージする人が大半かもしれません。

 しかしUX会議が開く「ひきこもりUX女子会」は、都内が会場の場合、時に100人以上の当事者が集まり、コロナ下で定員を半数に絞った今も「すぐに枠が埋まる」ほど。自治体と連携して地方で女子会を開くと、来場者の多さに行政職員が「こんなにいたんですか!」と驚くこともしばしばです。

「手のかからない子」は危険? 母親に支配されひきこもりに

 林さん自身は高2で不登校、20代半ばでひきこもりになりました。「人格も人生も母に支配され、口答えは絶対にできなかった。『どうしたい?』と聞かれたことは一度もありません」と振り返ります。

 「妻」、「母」と並び、社会が長く女性たちに背負わせてきたのが「よき娘」という役割です。ひきこもった原因の一つに、母親との関係を挙げる女性は少なくありません。