これまで「親たちへ 私がひきこもった理由」と「子どもがひきこもりに そのとき、親は……」の2つの連載で、ひきこもり当事者と親の話を紹介しました。この連載では、支援者や識者などに「ひきこもり」を社会全体で受け止めるためのヒントを聞きます。今回は、ひきこもり当事者へ在宅ワークを提供する企業の社長に、社会と親ができることを聞きました。

社会人経験がなくても能力を発揮

 ひきこもりの子を持つ親の最終的な願いは、ほとんどの場合「仕事をして経済的に自立してもらうこと」です。そしてこの場合の「仕事」とは大抵、ひきこもり状態を脱して「家の外」に出て行うものを指しています。それには、社会に出て人間関係を回復させる必要があり、それが高いハードルになっています。

 一方、ひきこもった状態のままでできる在宅ワークを提供する会社があります。2017年12月に設立された「ウチらめっちゃ細かいんで」(めちゃコマ)です。社長の佐藤啓さんは、ひきこもりの人たちを「人材の宝庫」と語る一方で、就労は全ての当事者にとっての「ゴール」ではないと強調します。

 ホームページ制作とオンラインIT講座の運営が事業の柱です。ホームページ制作を担うのも、オンライン講座の講師もひきこもりの人が主体。そして講座受講者も、ひきこもりの当事者です。

 佐藤さんは2006年、めちゃコマの親会社にあたるIT系教育会社を起業しました。業務を通じてITエンジニア不足を感じる中、「パソコンに強そう」と着目したのが、ひきこもりの人たちでした。

 ひきこもりの当事者団体や親の会に通い、話を聞きました。その結果、「2割くらいはプログラミングなど本格的なIT業務ができる可能性があり、4割くらいは訓練を受ければ、PCやスマホを使った簡単な作業ができそうだと感じました」

 実際に仕事を任せてみて、彼ら、彼女らの「細かさ」に驚きました。マニュアルやプログラマーの適性試験などを作ってもらうと、非常に精度が高く、穴のない制作物が仕上がってきました。「ひきこもり歴10年で就労経験はアルバイトという人も、高い能力を発揮してくれました」。ひきこもり当事者はしっかり仕事をこなせる、という手ごたえを得た佐藤さんは、めちゃコマを立ち上げたのです。

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  • 社員の幸せをおろそかにした結果、大量離職が発生
  • 変わる社会、就労はゴールじゃない
  • 親の経験則で、子どもの人生を決めないで 変わるべきは親自身

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