日経DUALの新刊、『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(小島慶子さん著)の発行を機に、テレビや雑誌で大活躍の2人のワーママが対談。21世紀を生きる子どもたちに伝えたいことや、男性の育児参画をよりいっそう進めるためには何をしたら良いか、そして、子どもたちの未来のためにDUAL世代の親たちができることについて語り合いました。書籍には収録しきれなかったお話も含め、連載で紹介します。

子どもの心を守るために、親も知識が必要だ

犬山 娘はもう3歳ですが、私が将来どう教えようかと思っているのがメンタルケアの方法です。ケガや病気については、学校でも習うけれど、心が傷ついたときにどうリカバリーしようかというのは、習わないですよね。

 今の日本には、うつや不安症など心の病気になる人はたくさんいるのに、初期段階でケアの方法を知らなかったために悪化してしまう現状があります。それは情報が足りていなかったせいもあると思うんです。自分の心が傷ついたときにどうやって心をいやしていくか、次に傷つきそうになったらどうやってバリアーを張ろうかという教育が、これからは本当に必要です。家庭であれ、学校であれ、それがしっかりなされたら、傷をこじらせた親も減って虐待の問題も減るんじゃないかなと思います。

小島 私は不安障害という病気の経験者で、ADHD(注意欠如・多動症)という発達障害があるのだけど、先日ある学校での講演で「創立何十周年のお祝いの式典なので、不安障害や発達障害などの暗い話はナシで」って言われて驚きました。よく当事者にそんなことを言えるなと。発達障害も不安障害も私の人生の一部ですから、講演ではちゃんと話しましたけれどね。でも、学校がこの調子ではインクルーシブな社会なんて実現するはずがありません。病気や障害に負のスティグマが刻まれて、蓋がされているんです

犬山 蓋をされまくっていて、タブーになっていますね。でも、子どもの心を守るのは、体を守るのと同じくらいに大切です。それには、親も知識が必要です。心が傷ついた初期状態のときに蓋をしないで、適切な関わり方をしていたら、その後つらい思いをしないで済むということも多いと思うんです。

メディアリテラシーではメタ的な物の見方が役に立つ

小島 インターネットとの付き合い方も大事。息子たちには、ネットのネガティブな意見などは、メタ的(物事を客観的に捉えること)に見るようにと話しています。例えば息子が「小島慶子」を検索して「ババア死ね」ってコメントを見たとします。これを真に受けたら、ショックですよね。母親がディスられているんですから。

 だから子どもには、「この人は、時間とエネルギーを割いて、なぜタレントにこんなリプライを送らずにいられなかったのだろう」という視点で見るといいよと話しています。

 会ったこともない人に、匿名で「死ね」という。もちろん通報すべきコメントです。これを文字通りに受け取るのではなく、「なぜこんなことをするのだろう」と考える習慣は、今の複雑な社会を生きる上で助けになると思います

犬山 目の前のことを「どういうことなんだろう」と俯瞰(ふかん)で見るということですね。

小島 ネットという巨大な匿名空間には迷信やデマや魔女狩りが横行してますね。技術的には新しいですが、人々の行動はむしろ、根拠のない言説で人が殺されるような中世の世界に退行しているんじゃないかと思います。デジタルネイティブの子どもたちには、物事を引きで見ることを教えることがとても大事です。いわゆるメディアリテラシー教育ですね