「ママはどれがいいと思う?」と聞かれたらどう答える?

菅原さん:「これを選んでほしい」といった期待を一切封じ込めること。これに尽きます。親の意に沿いたい気質の子どもに、習い事や洋服などについて選択肢を示すと、必ず「ママはどれがいいと思う?」と聞き返してくるはずです。

本庄:私の娘もしょっちゅうそのセリフを言います。

菅原さん:子どもから答えを求められても、すぐに答えてはいけません。「ママも迷っちゃう~」などと言いながら、一緒に考えようという姿勢を見せるのがいいと思います。これを選んでほしい、といった期待があると、どうしても、言葉巧みに子どもを誘導しようとしてしまいます。そうではなく、示した選択肢一つひとつについて客観的な情報だけを与えるようにしましょう。その上で、「どれが一番面白そう?」「どれが好き?」などと聞いてあげると、子どもは本心を答えてくれるようになるはずです。

本庄:なるほど……。私自身、これまでは時間がなかったり、心配だったりで、つい先回りで決めてしまうことが多かったように思います。今後はなるべく本人の意思を確認するまで待つことを心がけていきます。私自身は親の顔色を見て選ぶということを続けてきた結果、すっかり優柔不断になってしまいました。昔からボールペン1本選ぶのに平気で1時間悩んでしまうんです。

菅原さん:それは、もともとそういう気質を持っていることも大いに影響しているんですよ。

本庄:え? これも気質なんですか? 支配的な母親に育てられたからではなく?

菅原さん:はい。必ずしも、お母様の存在だけが原因ではないと思います。でも、本庄さんがそういう気質の子どもだったからこそ、本来はお父様やお母様がもっと慎重になり、本人に選択させるという経験を積ませてあげるべきでした。子どもの気質を見極めることは本当に重要です。これについては、改めてご説明しますね。

(第4回に続く)

取材・文/本庄葉子 イメージ写真/PIXTA

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本庄葉子(ほんじょう・ようこ)
ライター・翻訳家
本庄葉子(ほんじょう・ようこ) 3歳の女の子のママ。小学校から名門の私立育ち、大学からは大都市の有名校に進学。その後大学院で修士課程を修了。大手メディアに勤務後、フリーランスに。海外経験を生かして翻訳業務にも携わる(本庄葉子はペンネーム)。


菅原裕子(すがはら・ゆうこ)
NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事
菅原裕子(すがはら・ゆうこ) ワイズコミュニケーション代表取締役。人材開発コンサルタントとして企業の人材育成に携わる一方、その経験と自身の子育て経験から、子どもが自分らしく生きることを援助するためのプログラム<ハートフルコミュニケーション>を開発。『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)、『コーチングの技術』(講談社現代新書)など著書多数。https://www.heartful-com.org/