子どもの人生は親の頑張りでは決まらない

菅原さん:親は自分の夢を子に託したがりますが、それってヘンでしょう? 私はよく、子どもの頭に載せた夢を自分の頭に載せかえて、自分自身に「頑張れ!頑張れ!」と発破をかけたらどう?と言っています。(笑) 早々に自分の夢を諦めて子どもにかぶせるより、例えば医者になりたかったのなら、今からでも自分が頑張ればいい。「ごめん、お母さんは勉強で忙しいの。自分の勉強は自分でやってね」と言える親のほうがずっと素敵だと思います。

子どもに「勉強しなさい!」と発破をかけるのでなく、「お母さんは勉強で忙しいの!」と言える方が子どもに好影響を与えることができる
子どもに「勉強しなさい!」と発破をかけるのでなく、「お母さんは勉強で忙しいの!」と言える方が子どもに好影響を与えることができる

 結局、親は子どもを自分の手柄にしたいのです。子どもは自分の付属物、作品という気持ちがあるということですね。

本庄:そういえば、母も「あなたもきょうだいも私の最高傑作」と言っていました…。

菅原さん:(苦笑)。子どもの成し得たことはすべて、本人の手柄ですよ! 以前、ある有名スポーツ選手のお母さんと対談をする企画が持ち上がったのですが、「あの子が自分で頑張った結果です。私は何もしていません」とお断りされました。私はそのお母様を、心から素晴らしいと思いました。とても真っ当な考え方です。逆に、子どもを付属物や作品と考えてしまう人は、背景に「この子が人生をどう歩むかは私の頑張り次第」という思い込みがあると思います。

本庄:私も無意識にそう考えてしまっていました!

菅原さん:完全に突き放すのでもなく、子どもと一緒に、子ども自身が納得できる道をゆっくりと探せばいいんです。ただ、そのためには親自身の生き方が問われます。だから、親がしっかりと『自分軸』を持っていなければいけません。何事も「本人次第」というのが私の考え方。親の人生も、子どもの人生もすべては本人次第でどうにでもなるのです(第3回に続く)。

取材・文/本庄葉子 イメージ写真/PIXTA

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本庄葉子(ほんじょう・ようこ)
ライター・翻訳家
本庄葉子(ほんじょう・ようこ) 3歳の女の子のママ。小学校から名門の私立育ち、大学からは大都市の有名校に進学。その後大学院で修士課程を修了。大手メディアに勤務後、フリーランスに。海外経験を生かして翻訳業務にも携わる(本庄葉子はペンネーム)。


菅原裕子(すがはら・ゆうこ)
NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事
菅原裕子(すがはら・ゆうこ) ワイズコミュニケーション代表取締役。人材開発コンサルタントとして企業の人材育成に携わる一方、その経験と自身の子育て経験から、子どもが自分らしく生きることを援助するためのプログラム<ハートフルコミュニケーション>を開発。『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)、『コーチングの技術』(講談社現代新書)など著書多数。https://www.heartful-com.org/