一度子が心を閉じてしまったら、子からのアプローチ待つのみ

菅原:正当化はもちろん、罪悪感の押しつけもしないでいただきたいですね。一度子どもが心を閉じてしまったら、子どもからのアプローチを待つしかありません。親ができるのは、子どもが声をかけやすい環境をつくることしかないのです。

 正当化と罪悪感というと、真反対のもののように思えるかもしれませんが、実はこの両者は表裏一体で、心の中を行ったり来たりします。

本庄:どういうことでしょうか。

菅原:例えば、私が相談を受けた中で、もう20歳を過ぎた息子が突然引きこもりがちになり、会話が成立しないというケースがありました。この息子さんはずっと母親に強く否定され続けて、成人してからのタイミングで症状として出てしまった。親御さんは、最初は自分を正当化していたようですが、途中で自分の言動が原因だと自覚してからは、過度に罪の意識を抱くようになりました。その気持ちが息子さんにも伝わって、さらに息子が心を閉ざすという悪循環に陥っていたのです。

 そこで、「罪悪感を表現するのではなく、黙って、にこやかに、おいしいご飯を作って、普通に暮らしていてください」と伝えました。2カ月後、やっと息子さんが話しかけてくれたそうです。母親の心の重みが外れ、罪悪感にまみれた心が静かになったことで、息子を受け入れようとしている親の心が、息子さん自身に伝わったのです。

本庄:なるほど……。罪悪感も正当化も、結局は「原因はあなたにある」と、子どもを責めているようなものなのですね。

菅原:はい。どちらも子どもにとっては大きな負担になります。だからといって、全く罪悪感が不要だというわけではありません。「子どもにぶつけてはいけない」ということです。

(第6回に続く)

取材・文/本庄葉子 イメージ写真/PIXTA

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本庄葉子(ほんじょう・ようこ)
ライター・翻訳家
本庄葉子(ほんじょう・ようこ) 3歳の女の子のママ。小学校から名門の私立育ち、大学からは大都市の有名校に進学。その後大学院で修士課程を修了。大手メディアに勤務後、フリーランスに。海外経験を生かして翻訳業務にも携わる(本庄葉子はペンネーム)。


菅原裕子(すがはら・ゆうこ)
NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事
菅原裕子(すがはら・ゆうこ) ワイズコミュニケーション代表取締役。人材開発コンサルタントとして企業の人材育成に携わる一方、その経験と自身の子育て経験から、子どもが自分らしく生きることを援助するためのプログラム<ハートフルコミュニケーション>を開発。『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)、『コーチングの技術』(講談社現代新書)など著書多数。https://www.heartful-com.org/