とろりとしていて体が温まる「サハレップ」

クリスマスの残りのチョコレートを入れたサハレップ
クリスマスの残りのチョコレートを入れたサハレップ

―― 今回ご紹介いただくレシピは、パレスチナの「サハレップ」というホットドリンクですね。中東と聞くと暖かいイメージがありますが、パレスチナは寒かったのですか?

岡根谷 私が行った12月は、真冬の東京と変わらないくらいの気温でした。サハレップは、3人の姉妹がいる一家と一緒に作りましたが、自宅にはまきストーブがあり、その上でパンなどを焼いていました。そこまで広い自宅ではないのですが、小さなキッチンがもう一つあるようなイメージです。

 ここで料理をすると、温かいだけではなくいい香りもしてきて、ストーブの前が、「家族の集まる憩いの場」になるんですよね。

ストーブの上がオーブンになっている
ストーブの上がオーブンになっている

―― サハレップとはどんなもので、現地では、どんなときに飲まれているのですか?

岡根谷 この家庭では、牛乳にコーンスターチのようなでんぷんを入れて混ぜ、とろみがついてきたところに、そのときどきで、すりおろしたレモンの皮やローズウオーター、シナモンなどで香りづけをして飲んでいました。

 夕食にビスケットを食べながらサハレップを飲むこともありましたし、夕食後に作って飲むこともありました。

―― 夕食がビスケットとサハレップだけ? お腹は空かないのですか。

岡根谷 パレスチナの一般家庭では、1日のメインの食事がランチなんですね。ランチといっても、14時頃にお父さんや子どもたちが仕事や学校から帰ってきてから食べるので、夕食は小腹を満たす程度の軽食で済ますのです。

―― 日本のように「3食しっかり食べる」という感じではないのですね。

岡根谷 そうですね。そもそも1日3食というのは、今の日本で標準的とされる食事スタイルであって、他国でも同じとは限りません。パレスチナの食事のリズムは、昼にしっかり、夜は軽くというものでした。

温かいストーブの前に集まり、サハレップを飲む子どもたち
温かいストーブの前に集まり、サハレップを飲む子どもたち

岡根谷 この家庭では、7歳の長女がサハレップを作ってくれたのですが、「お母さん、サハレップ作って」と親に頼むのではなく、「今日もサハレップを作ってもいい?」と聞いて自分で作る姿が印象的でした

 サハレップは、簡単に作れて、日本の葛湯のようにとろみがあるのですごく体が温まります。季節はもう春ですが、まだまだ底冷えする日もありますよね。そんな日にぜひ作って飲んでみてください。とろーり温かなドリンクが、芯から体を温めてくれると思います。

子どもと一緒に作るのもおすすめ「サハレップ」

パレスチナで作ったホットドリンク「サハレップ」の作り方

【材料(2〜3人分)】
・牛乳 500ml
・コーンスターチ(または片栗粉) 大さじ2〜3
・砂糖 大さじ2
・シナモン、ローズウオーター、レモンの皮のすりおろしなど お好みで

【作り方】

1,牛乳、コーンスターチ(または片栗粉)、砂糖を小鍋に入れて火にかける。強火にしてクツクツと沸いてきたら、とろみがでるまでスプーンなどでかき混ぜる。

2, 香り付けに、ローズウオーターやレモンの皮のすりおろしなどを入れ、全体を混ぜて完成。マグカップに注ぎ、お好みでシナモンを振ります。

 次回は、ベトナムの「バインミー」のレシピを紹介します!

構成/武末明子(日経DUAL編集部) 写真提供/岡根谷実里

岡根谷実里
世界の台所探検家
長野県生まれ。世界地理に魅了された高校生活を経て東京大学で土木工学を専攻。2012年に卒業後は大学院へ進み、その後、ウィーン工科大学へ留学。かねてから関心のあった途上国へのインフラ整備の夢を実現すべく国連工業開発機関(UNIDO)本部でインターンとして働くも、現地のケニアの人たちが開発に憤慨する姿を知り、人を笑顔にする「食」の世界へ。2021年に約7年務めたクックパッドを退職する。著書に、『世界の台所探検 料理から暮らしと社会がみえる』(青幻舎)がある。