2021年7月、福岡の保育園で送迎バスに閉じ込められた子どもが熱中症で亡くなるという事件がありました。他の園でも保育士が子どもに無理に食事を食べさせた、暴言を繰り返すなど不適切な保育が明らかになるケースが続いています。働く親にとって保育園は欠かせない場所ですが、わが子の保育園で暴力や暴言があったら?と不安に思っている人も多いでしょう。そこで、同僚の保育士の暴力や暴言を目にして、抗議したことがあるという保育士・大島彩さん(仮名)に話を聞きました。

(上編) 保育士対談 「園バス事件は他園でもあり得ると思った」
(中編) 保育現場のヒヤリハット 散歩で公園に置き去りも
(下編) 安心できる園選びのために保育士が保護者に伝えたいこと
(番外編) 保育士ママ 子をたたく同僚に抗議し、逆に危険分子扱い ←今回はココ

大島彩さん(仮名)
複数の民間認可保育園で保育士として7年間勤め、第1子、第2子を出産。産休・育休を経て職場復帰した後、同じ会社が運営する別の保育園へ異動。現在3歳と2歳になる子は1歳と0歳で公立保育園へ入園。今は別の民間保育園へ通っている。

子どもへの暴力や暴言。納得できない保育をしていた同僚

 2人の子どものママである現役保育士の大島彩さんは、働いている民間認可保育園で同僚保育士の保育に疑問を持ち、改善を求めて上司に抗議した経験があります。

 「先輩保育士のAさんが、子どもがしていることをやめさせるときにいつも子どもの手をパチンとたたくのです。保護者の前でも子どもをたたき『これはしつけ』と言っているので、悪いと思っていないのでしょう。私を含め他の保育士は、どんなときでも子どもをたたいてはいけないと考えていたので、園長に改善を訴えました。しかし園長は口頭注意をしただけ。最初に抗議してから1年ほどたちますが、具体的な予防策は今も取られていません」

 大島さんたちが望んだのは、子どもへの暴力が2度と起こらない仕組みを作ること。そのために、Aさんに研修を受けてもらったり、職場として虐待について考える機会を設けたりする対応を期待していました。

 「私の子どもも別の保育園に通っているのですが、保護者の立場に立って考えても、口頭注意だけで現場に戻すなんて信じられません。上司に対しても不信感を持ちました」

 Aさんはその後、何度注意されても子どもをたたく保育を続けています。しかし、園長にもAさんに強く注意できないという事情があるようだと大島さんは話します。

 「保育士不足の中、強く注意してAさんに退職されたら困るという事情を優先しているようなのです。確かにAさんは、早番や遅番のように人手が不足しがちなシフトを率先して引き受けています。でも、だからといって子どもに暴力を振るっていいということにはなりません。福岡の園バス事件のときも思いましたが、子どもの命や安全を守る仕組み作りはどのような状況でも最優先されるべきです。

 実は、初めて勤務した園でも、泣いている子どもに『泣かないでご飯を食べなさい!』と怒るような保育士がいました。そのときはこんな保育士と一緒に働きたくないと思って職場を変わりました。それなのに今の保育園でも子どもへのパワハラは行われていて……。もし新卒の保育士がパワハラ的な保育を見たら、『学校で習ってきたのとは違うけれど、実際にはこうするのか』と思ってしまうかもしれません。

 おかしいと思ったら声を上げていかなければ保育は変わらない、同じようなことが続いてしまうという危機感を強く持っています」

 大島さんと同僚は今も声を上げ続けていて、その結果、上司からは園の運営を妨げる危険分子のような扱いを受けています。

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次ページから読める内容

  • 保護者としてもアクション。不信感から子どもたちを転園させた
  • 暴力、暴言の背景にあるのは保育士のスキルの問題
  • 保護者に見えているのは、氷山の一角

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