働く親を不安にさせるのが保育園での事故や事件のニュースです。保育士は子どもの安全のためにどんなことに取り組んでいるのでしょうか。預ける側からはなかなか知ることができない現場での取り組みや課題について、元保育士で保育関係の事業を展開するうめ先生こと梅原志保さん、都内の企業主導型保育園園長を務めるちょび先生こと菊地奈津美さんに語ってもらいました。中編の今回は、保育での「ヒヤリハット事例(重大な事故になる一歩手前の事例)」にどう対応しているか、そもそもヒヤリハットが起きてしまう保育現場の現状、うめ先生のブラック園体験について話し合います。

(上編) 保育士対談 「園バス事件は他園でもあり得ると思った」
(中編) 保育現場のヒヤリハット 散歩で公園に置き去りも ←今回はココ
(下編) 安心できる園選び 保育方針を熟読すべき理由
(番外編) 保育士ママ 子をたたく同僚に抗議し、逆に危険分子扱い

うめ先生(梅原志保さん)
幼稚園教諭を経て保育士に。ブラックな環境だったため心身を崩し退職。その後復帰し、転職を繰り返しながら保育の研鑽に励む。現在は起業し、保育士や保育学生を対象にした保育関連のセミナーや講演活動のほか、YouTube「うめ先生チャンネル」や、ブログ「うめ先生の保育士ブログ」などで保育に関連する情報をイラストを描きながら発信している。3児の母で末っ子を保育園に預けている。

ちょび先生(菊地奈津美さん)
公立保育園で保育士として働いたのち、東京都の認証保育園に転職。退職後、保育士仲間と企業主導型保育施設「こどもの王国保育園」を立ち上げる。現在は園長を務めている。YouTubeではちょび先生の名前で、保育士向けの情報を配信。保育者が保育への熱い思いを語るプレゼンテーション大会「保育ドリームプラン・プレゼンテーション」など保育関連のイベント運営にも携わっている。

保育現場のヒヤリハットをゼロにするのは難しい

日経xwoman DUAL(以下、略) 危険を感じてヒヤリとしたことや、ハッとしたできごと、いわゆる「ヒヤリハット」は大きな事故につながることもあります。ヒヤリハットに対して保育園でどのような取り組みをしているのかは気になるところです。上編で、事例を報告書に書こうとすると管理職に怒られるというお話が出ましたが、それはどうしてなのでしょうか?

菊地奈津美さん(以下、ちょび先生) ヒヤリハットを報告する意義を分かっていない管理職もいるということです。ヒヤリハットの事例を共有することには、保育士の安全意識を高めたり、事故を減らしたりするメリットがあります。それを分かっていないと、ヒヤリハットが起きたことだけに目が向いて、責任感から怒ってしまうのでしょう。しかし大切なのは、同じことが起きないためにどうするかです。

―― 園によっては園内のマップに事例を記載した「ヒヤリハット安全マップ」を作っているそうですね。

ちょび先生 基本的にはどの園でも子どもの安全を守る取り組みをしているので、認可でも認可外でもある程度はそういう取り組みをしているはずです。ただし、監査用にマップを作ってほとんど運用していないという園もあるかもしれません。

梅原志保さん(以下、うめ先生) 私が勤めていた認可園では、子どもがケガをしそうになった場所や死角になりやすい場所にシールを貼っていました。そうすると、保育者からも保護者からも危険な場所が分かりますし、みんなで気を付けようという意識も高まります。

―― ヒヤリハットの経験はどの保育士さんもあるのでしょうか。

うめ先生 ヒヤリハットの経験がない保育士はいないのではと思います。どんなに毎朝、安全確認をしていても起こってしまうんですよね。

 というのも子どもたちは自分で遊びをつくることが大好きなので、大人が予測できないことをするんです。朝、安全点検をしたすべり台であっても「そんなところから降りるの?」というような遊び方をして「ヒヤリ」ということがあります。だからこそヒヤリハット事例を園全体で共有することが大切です。共有しておけば、次に他の保育士が見ていたとしても「あそこから降りようとするかも」と予測することができますから、安全性の向上につながります

―― 友達同士のトラブルもありそうですね。

うめ先生 とくに小さい子は語彙が少なく、自分の思いを伝えることも未熟です。「やめて!」と言えなくて、お友達にかみついてしまったということは出てきますよね。保育士も予測をして目を離さないようにしているのですが、ヒヤリハットをゼロにすることは、とても難しいです。

ちょび先生 他園の事例ですが、散歩で行った公園に子どもを置いてきてしまった、というヒヤリハットを何件か聞いたことがあります。いずれも途中ですぐに気づいて迎えに行き、事なきを得たそうですが。

―― 保護者が知ったらかなりショックだと思います。園はどう対処するのでしょうか。

ちょび先生 安全意識の高い園であれば「大事に至らなくてよかったね」で終わらせることはないはずです。同じようなことがまた起こらないように、現場に行ってなぜそれが起きたのかを検証し、それを元に事故簿を書いて対策を考えます。保護者にもきちんと伝えて謝罪します。全体の保護者会を行っていた園もあります。それらが安全性の向上につながり、保育士自身を成長させ、より安全な保育につながります。

散歩の時、公園に子どもを置いてきてしまったというヒヤリハットも起きている(写真はイメージ)
散歩の時、公園に子どもを置いてきてしまったというヒヤリハットも起きている(写真はイメージ)