働く親を不安にさせるのが保育園での事故や事件のニュースです。特に2021年7月末に福岡県の私立保育園の送迎バスで園児が亡くなった事件には多くの親が衝撃を受けたことでしょう。今通っている保育園が、本当に子どもを安心して預けられる場所かどうか、親はどのように見極めたら良いのでしょうか。また、保育士は子どもの安全のためにどんなことに取り組んでいるのでしょうか。預ける側からはなかなか知ることができない現場での取り組みや課題について、元保育士で保育関係の事業を展開するうめ先生こと梅原志保さんと、都内の企業主導型保育園園長を務めるちょび先生こと菊地奈津美さん、2人のYouTuber保育士に語ってもらいました。ママ保育士が保育の安全を求めて戦った自身の体験を語る番外編を含め、全4回の連載でお届けします。

(上編) 保育士対談 「園バス事件は他園でもあり得ると思った」 ←今回はココ
(中編) 保育現場のヒヤリハット 散歩で公園に置き去りも
(下編) 安心できる園選び 保育方針を熟読すべき理由
(番外編) 保育士ママ 子をたたく同僚に抗議し、逆に危険分子扱い

うめ先生(梅原志保さん)
幼稚園教諭を経て保育士に。ブラックな環境だったため心身を崩し退職。その後復帰し、転職を繰り返しながら保育の研鑽に励む。現在は起業し、保育士や保育学生を対象にした保育関連のセミナーや講演活動のほか、YouTube「うめ先生チャンネル」や、ブログ「うめ先生の保育士ブログ」などで保育に関連する情報をイラストを描きながら発信している。3児の母で末っ子を保育園に預けている。

ちょび先生(菊地奈津美さん)
公立保育園で保育士として働いたのち、東京都の認証保育園に転職。退職後、保育士仲間と企業主導型保育施設「こどもの王国保育園」を立ち上げる。現在は園長を務めている。YouTubeではちょび先生の名前で、保育士向けの情報を配信。保育者が保育への熱い思いを語るプレゼンテーション大会「保育ドリームプラン・プレゼンテーション」など保育関連のイベント運営にも携わっている。

福岡の園バスのようなことが再び起こる可能性はゼロではない

日経xwoman DUAL(以下、略) お二人とも複数の園で働いた経験がありますね。現在はどのような活動をされているか教えてください。

梅原志保さん(以下、うめ先生) 6園で保育士を経験した後、起業して保育士や保育学生を対象に保育関連のセミナーなどを行う事業活動を行っています。近い将来には保育園を作りたいと準備を進めているところです。

菊地奈津美さん(以下、ちょび先生) 新卒で公立認可保育園で働いていました。公立といっても、園長が替わると方針が変わることはよくあります。自分がやりたい保育、大事にしたい保育ができる年もあれば、そうでない年もあって、モヤモヤを抱えたことから私立園に転職したという経歴があります。そこで担任や主任を経験した後、仲間と一緒に企業主導型の保育園を立ち上げました。現在、東京都内で2つの保育園を運営しており、私はそのうちの1つで園長をしています。

―― 福岡の園バスの事件は、送迎バスを運転していた園長が、5歳の園児を車内に残したままドアを施錠。約9時間にわたって取り残された園児が、熱中症で亡くなるという痛ましい事故でした。お二人はどう受け止めましたか。

うめ先生 率直な意見を言うと、あり得ないのひと言です。どのような施設であれ、保育者は子どもを受け入れた段階から、常に子どもの様子を見る責任があります。人数確認はもちろんのこと、一人ひとりの体調や機嫌を把握しながら保育をする。これは保育の基本です。その基本ができていれば起こり得なかった事件だと思っています。

ちょび先生 このニュースを最初に聞いたとき、朝から帰りの時間まで、保育士の誰ひとりその子がいないのをおかしいと思わなかったこと、確認をしなかったことに驚きました。

 ただ、最新の保育の安全や教育に関する情報を発信している「保育の安全研究・教育センター」の掛札逸美さんが発信されている動画を視聴して、実はどこの園でも起こり得ると考えが変わりました。

 掛札さんはこの事件は、保育の中で起こり得る2つの「穴」を通り抜けてしまったため起こったと指摘しています。1つ目の穴はバスを降りるときに人数確認をしなかったこと。2つ目は担任の保育士が子どもが休みかどうかを確認しなかったことです。

 本来なら送迎バスの人数確認をしなければいけない。万が一しなかったとしても、担任の先生は子どもがいないことを疑問に思い、確認しなければいけません。どちらかをしていれば、事件は防げたはず。ところが2つともすり抜けてしまったために事件が起きた……。決して起きてはいけないことだけれど、穴が2つ重なることはあり得ると思いました。

うめ先生 確かにそうですね。

ちょび先生 2つ目の穴が他の園でもあり得ると思う背景には、担任と園長の関係性があまりよくない園もあるからです。人間関係のよい園なら「今日は○○君がまだ来ていないのですが報告が来ていません。園バスには乗っていましたか?」と気軽に聞けるはずです。

うめ先生 反対に担任と園長が気軽に話をできない園もありますね。そのような園だと、担任は気になっても聞きにくくて「連絡はないけれどきっとお休みなんだな」で終わらせてしまう可能性はあります。

ちょび先生 そうなんです。そういう実態もあることから、他の園で起きる可能性はゼロではないと思いました。もちろん、ほとんどの保育士は細心の注意を払って保育にあたっています。

 一つひとつの確認を当たり前にしていれば起こらないはず。だとしても「うちの園は大丈夫だ」と人ごとにしてはいけない。そういう事件だと思います。

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  • 認可保育園の「安全神話」は誤解。絶対に安心とは言えない
  • 安全の取り組み方は、経営者、管理職の裁量に左右される

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