1983年に設立された働く親たちがつながるネットワーク「保育園を考える親の会」は毎年、首都圏の主要都市および政令市の100市区の保育施策について独自の調査を行い、「100都市保育力充実度チェック」として発表しています。調査の結果からは何が見えるのでしょう。この連載では同会代表の普光院亜紀さんが都市部の保育事情をリポート。これから保活が始まる人、すでに保育園に入園しているけど転園も視野に入れている人が知っておきたい最新事情をお届けします。

保育施策を点検 「みんな入れる」時代はいつ来るのか
■普光院亜紀 保育士割合や園庭保有率は自治体で大差 ←今回はココ
■公立保育園の民営化について

国や自治体の基準が「保育の質」の土台を支える

 最近また、保育園での事故や事件の報道が目立ってきました。原因はさまざまですが、1つ言えることは、背景で保育の質の低下が起こっている場合も多いということです。第2回は、保育の質をテーマに、2021年度版「100都市保育力充実度チェック」の結果から考えてみたいと思います(調査対象は、首都圏の主要都市と政令市100市区)。

 認可保育園等(認可保育園、認定こども園、小規模保育、家庭的保育など)は、国や自治体の基準を満たして認可された保育施設・事業です。これらの施設・事業には、基準を満たす保育を実施するための費用が公費から出ています(一部は保護者が保育料等で負担)。たとえば、保育士の賃金も、日々の保育にかかる経費も、基準に基づいて額(公定価格)が算出され自治体から施設に支払われます。

 そのため、例えば保育士の配置を基準よりも手厚くして保育の質を高めたいと事業者が考えても、施設には基準通りのお金しか出ません。配置基準が上がって初めて、保育士の賃金を保障しつつ、その配置を増やすことが可能になるのです。

 保育の質にはさまざまな側面があり、基準だけで決まるものではありませんが、その土台を支えるものとして、国や自治体の基準はとても重要なものなのです。

 「100都市保育力充実度チェック」では、毎年100市区について、認可保育園の保育士その他の職員配置や面積基準について調べています。2021年度版では、保育士の配置についての回答から全体的な傾向を分析しています。