「保育園を考える親の会」は毎年、首都圏の主要都市および政令市の100の市区の保育施策について独自の調査を行い、「100都市保育力充実度チェック」として発表しています。国の発表によれば、待機児童数は減少し、保育園への入園事情は大幅に改善しているように見えますが、本調査の結果からは何が見えるのでしょう。本連載では「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんのリポートで都市部の保育事情について考えていきます。

都市部ほど実情と乖離する待機児童数

 国は、例年よりも早く8月27日に全国の待機児童数を発表しました。それによれば、2021年4月1日時点での待機児童数は5634人で、前年の1万2439人から半減しました。「待機児童数ゼロ」を宣言した自治体も88増えて312市区町村に上りました。

 実は、「保育園を考える親の会」では、この待機児童数が保護者の体感する入園事情と大きく食い違っていることを問題にしてきました。その原因は、下のグラフを見ると分かります。グラフの上に書かれている数字は、100市区で認可の保育(認可保育園、認定こども園、小規模保育、家庭的保育など)に入園申請をして、認可の保育を利用できなかった児童数の合計です。グラフの右の文字は、おのおのの人数の子どもたちが待機児童数にカウントされなかった理由です(国が定義しているもの)。

(2021年度版「100都市保育力充実度チェック」より)
(2021年度版「100都市保育力充実度チェック」より)

 この「認可に申請して認可を利用できなかった児童数」は、100市区の待機児童数合計の27.0倍に上っています。これは全国計の15.3倍よりもはるかに大きく、都市部ほど「認可に申請して利用できなかった児童数」と待機児童数の乖離が大きいこと、つまり待機児童数が大幅に縮小されて報告されていることがわかります。

 100市区のうち、「待機児童数ゼロ」と発表している自治体は39市区ありますが、実際に「認可に申請して認可を利用できなかった児童数」がゼロだったのは、千葉県の我孫子市のみでした。

コロナ禍による利用控えも見込む必要

 ところで、前の100市区合計のグラフにおいて、待機児童数にカウントされなかった理由別の人数を見ると、最も多いのは「特定の保育園等のみを希望している者」(自治体が他に通える認可・認可外園を案内しても辞退しているケース)でした。この項目は例年約4割と最も大きい比率を占めますが、利用者が他の園に入園したくないのはなぜなのか理由が明確にされていません。整備された認可・認可外園の立地や保育の質が、利用者のニーズとミスマッチになっている可能性があります。

 また、唯一数が増加している項目が「育児休業中の者」の人数です。これは「育児休業中で、復職の意思が確認できない者」とみなされるケースで、育児休業を延長する手続きに必要な不承諾通知をもらうために入園申請をしているケースも含まれています。ここが増加しているのは、育児休業の延長制度が普及したためとも考えられますが、コロナ禍で保育の利用に不安を感じている人が育休を延長していることも考えられます。いずれにしても、この積み残し分は来年度に上積みされる可能性があり、要注意です。

 こういった数字を見ると、何よりも現在の待機児童数のカウント方法に疑問を感じますが、同時に、保育の整備のやり方、育児休業延長制度のあり方などについても、再検討すべき点があるのではないかと思われます。