親のつぶやきからも子は自然に学ぶ
私の娘が5歳後半のころに、ゆず湯に入っていて、「お風呂にゆずを入れると、なんでゆずの香りがするの」と質問してきたんです。「なんでだろうねえ」と一緒に考えたら、娘が「鼻の奥にいる小人が、脳に教えてくれるんじゃないかな」って言い出したんです。神経学の観点から考えると正解ではないけれど、必ずしも大間違いとも言えないですよね。そうやって、自発的に何かに疑問を持ち、理由や原因を考えてみる――生活のなかのいろいろな現象について深く考えるきっかけになります。
もし「お風呂で、手が軽くなるのはなんだろう」と言われたら、「自然界には浮力というものがあってね」といきなり話すのではなく、「どうしてだろう? どうしてかな?」と一緒に考えることが正解です。子どもはいろいろ考えて「プールの時は浮輪を使っていたね。そうじゃないと沈んじゃうよね」「お風呂は温かいけど……下から持ち上げているのかな」なんて話が出るかもしれません。
子どもがそうして自分で疑問を持ち、考える喜びを知ると、自分でどんどん考えるようになります。そのためには、大人の姿勢も大切。何かあるたびにスマホで正解を調べるのではなく、例えばテレビを見ているときに「これはなんでだろう」「これはこういうことかしら」とつぶやいていたりすると、疑問を持って考えるという姿を自然に学ぶと思います。
ぜひ、家庭でいろいろなことを「面白がる経験」を親子でしてみてください。
次回は、「先取り教育や習い事で自信を持たせるべき?」というお悩みについてアドバイスをいただきます。
取材・文/西山美紀 イメージカット/PIXTA
環太平洋大学教授、お茶の水女子大学名誉教授
『「頭がいい子」が育つ家庭の8つの習慣』
(日経DUAL編、1540円、日経BP刊)
自分から学ぶ意欲のある子を育てるために、親はどのように子と関わればよいのでしょうか。専門家・著名人たち9人への取材から見えてきたのは、子の主体性を尊重し、親が自分の方針や思いを押しつけない姿。「勉強しなさい」と叱ったり、低年齢から塾に通わせたりするのではなく、夢中になれる体験や遊びを通して、子ども自身の「やりたい」「学びたい」という気持ちを自然に引き出すというものでした。具体的なノウハウを「8つの習慣」として紹介します。
【主な内容】
プロローグ:「勉強しなさい!」よりも大切な親の関わり方
お茶の水女子大学名誉教授 内田伸子さん
・抽象的な思考の土台となるのは、遊びを通じた「実体験」
・幼稚園卒と保育園卒で学力に差は出るのか
習慣1:自由な遊びと体験で「想像力」を伸ばす
生物学者・青山学院大学教授 福岡伸一さん
・回り道にこそ豊かな学びがある
・中学受験も、頑張り体験の1つ
習慣2:子どもの「やりたい」気持ちを止めない
東大卒タレントで2児の母 髙田万由子さん
・子どもが見つけた「好きなこと」には口出ししない
・失敗から学ばせる ・積極的に外遊びをさせる
習慣3:正解を与えない
京大卒の高学歴芸人 ロザン・宇治原史規さん
・問題が解けたら「わあ! すごいね」
・宿題のやり方を、あえて子どもに教えてもらう
習慣4:子ども自身に考えさせ、決めさせる ~非認知能力を高める~
日本人初の「全米最優秀女子高生」の母 ボーク重子さん
・小学校3年生まで「教科書も宿題もなし」
・子どもの裁量に任せるために、家庭でルールを設ける
習慣5:親も一緒に成長する
マザーネット社長 上田理恵子さん
・「勉強ができなくて困る」ことに気づかせる
・勉強のやり方、時間の使い方は自分で考えさせる
習慣6:「熱中体験」で地頭のいい子を育てる
脳科学者 茂木健一郎さん
・何かに熱中する体験が地頭をよくする
・「自分ならできる」と思える子に育てるには
習慣7:教育はリビングの本棚から始める
YESインターナショナルスクール校長・サイエンス作家 竹内薫さん
・読書は「発信力」をつけるために大切
・本がある家庭で育つと読み書き・計算の能力に影響
習慣8:なんで?の繰り返しで理系思考を育てる
東京大学教授 「渋滞学」考案者 西成活裕さん
・大切なのは「没頭経験」と「負けず嫌い」
・「言葉つなぎゲーム」で論理力を鍛える
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