待機児童問題解消のために保育施設が増えた今、各自治体や園が注力しているのは、「保育の質」向上のための施策といいます。どのような取り組みをしているのでしょうか。また、保護者は保育園のどういう点に着目し、どう選んだらよいのでしょうか。玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友さんに聞きました。

日本でも「保育の質」に注目が集まってきた

 「世界的には、だいぶ前から『保育の質』が課題になっていましたが、最近日本でもようやく注目されるようになりました」と、玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友(おおまめうだ ひろとも)さん。大豆生田さんは、厚生労働省が立ち上げた「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会」の座長代理として、2年間かけて課題に取り組んできました。少子高齢化が進む今、「保育の量」から「保育の質」へと日本における保育の課題が移り変わってきたといいます。

 「『保育の質』とは、厚労省の保育の質の確保・向上の検討会では、『子どもが得られる経験の豊かさと、それを支える保育の実践や人的・物的な環境など、多層的で多彩な要素により成り立つ』とし、日本では特に『子どもにとってどうか』を基盤に、『遊びの重視』『一人ひとりに応じた関わりや配慮』『子ども相互の育ち合い』等が特色となっているのです」(大豆生田さん、以下同)

 保育園、幼稚園、認定こども園といったさまざまな保育施設があります。そもそも保育園の保育の質を考える前に、まず「幼稚園」との差が気になる親もいるでしょう。「幼稚園に通えば、しっかり椅子に座って先生の話を長く聞くことができるようになる」というイメージを抱く保護者も少なくありません。しかし、それは誤った理解だと大豆生田さんは指摘します。

 「実は保育園も幼稚園も、今は目指すところが同じです」

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