新年度の保育園入園に向け、一部の自治体では既に認可園の申し込みが始まりました。以前は、どの自治体も待機児童が多く、とにかく保育園に入りたいという声が多く聞かれました。その後整備が進み、待機児童ゼロの自治体も出てきています。一方で、保育サービスの現状と課題にも変化が出てきているようです。「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんに詳しく聞きました。

「入れるならどこでも」のフェーズは脱却。それでもゆとりは不足

 待機児童問題に各自治体が取り組み続け、都市部では認可保育園の整備が急ピッチで進んでいます。小規模保育などの新しい認可保育制度ができたり、認可外にも、従来の自治体の助成施設に加え、国が助成する企業主導型保育事業ができたりして、保育施設や制度の多様化が進みました。

 「以前は『どこでもいいので入れる保育園を探す』という方も多かったと思いますが、今は保育園が増えて、保育サービスの“質”を見て選ぶ時代になったと感じます」と普光院亜紀さんは言います。

 「通勤ルート内にあるから」といった利便性だけで決めるのではなく、事前に見学をしてわが子にあった園を選ぶなど、しっかり見極めたい人が増えてきているようです。とはいえ、真の待機児童問題は解消されていないと指摘します。

 「2021年度の4月入園では0歳児クラスに空きが出た地域も多かったようですが、1歳児クラスでは相変わらず厳しい状況も見られました。園やクラスによって差がありますが、4月を過ぎると空きがどんどん埋まって年度途中入園は難しいという事情は変わっていません。0歳や1歳の4月入園を目指す方が多いのですが、本来、保育園は『いつでも、入りたいときに入れること』が理想です。4月しかチャンスがないために、産み月をコントロールしようとしたり、0歳児で育休を切り上げるかどうか迷ったりして、苦しい思いをしている人はまだ多いと思います」(普光院さん、以下同)

 自治体など、保育施設を運営する側にとって、常に空きがある状態は高コストになりやすいという問題があります。

 「しかし、年度当初に園児の数や保育のスペースに『ゆとり』を持たせることができれば、保育士の負担を軽減できます。すると、保育の質を上げることができ、年度途中の受け入れも少しはできるようになると思います。保育士は、日々あまりにも忙しいために本来の保育ができなかったり、子どもにつらく当たってしまうことも起こっています。『ゆとり』を持てる時期があれば前倒しで準備をしたり、体制を整えることもできるでしょう。

 保育園の数が増えてきた今、保育の“質”を見直すフェーズに来ています。国や自治体の子育て支援として、保育の『ゆとり』と年度途中の入園枠をつくることをサポートしていってほしいと思います」

数が増えたことで保育施設のタイプはさまざまに。園庭の有無、保育室の環境、立地などは保護者が自分の目で見て確認したい/イメージカット
数が増えたことで保育施設のタイプはさまざまに。園庭の有無、保育室の環境、立地などは保護者が自分の目で見て確認したい/イメージカット