「頑張らないでね」と言われてハッとした

 「第1子の育休明けにフルタイムで管理職を務めていたときは、『自分には責任がある』という無意味なプレッシャーを自分自身にかけ、周囲にもプレッシャーを与えてしまいました。きちんと仕事を進めるために、To Doを洗い出してスケジュールを細かく切り、メンバーの仕事の進捗も厳しく管理して。自分のやり方を押しつけてしまった面があり、メンバーみんなが苦しそうだったし、頑張りすぎている自分も苦しかったです」

 このやり方でいいとは思えなかった。でも、何がいけないのか、どうすればいいのか――。その答えが見つかったのは、管理職を離れ、第2子、第3子の子育てを通してだったという。

子育ての経験がマネジメントに生きている、と梶原さん
子育ての経験がマネジメントに生きている、と梶原さん

 「最初の子のときは肩に力が入っていたこともあり、一から十まで口にして育てていました。1人目はそれでなんとかなっていたんです。ところが2人目、3人目に同じようにしても全然うまくいかない。個性が違い、それぞれに得意不得意があって、好きなことを伸ばしたほうが楽しいし、結果的に本人のためにもなるんですね。それに気づいたとき、仕事でも管理職としての自分が口を出しすぎていたことに思い至りました。

 上司が怖いと、意見を言うのに勇気が必要になり、議論がきちんとできませんよね。その結果、メンバーの得意なことを伸ばしたり、自由な発想を生かしたりすることができなくなっていたのだと思います」

 こうして梶原さんのなかで「頑張りすぎない自然体の管理職像」が形づくられていく。その過程で、ずいぶん前に、同社の新澤明男社長に言われた一言を反すうしたそうだ。

 「ある打ち合わせを終えて席を立とうとしたときに、『頑張らないでね』と言われたんです。『頑張ってね』と言われるものと思っていた私は、真意が分からなくて聞き返しました。そしたら社長は『女性が仕事をするときに、頑張らなくては続けられない会社にしたくないんだ』と。

 そのときは正直ピンと来なかったのですが、今なら意味が理解できます。やる前に自分でハードルを上げるのではなく、まずは肩の力を抜いてチャレンジしてみることが大切だということでしょう。子育てをしながら管理職を務めるにしても、頑張りすぎずに自然体で取り組むこと。それによって、より多くの女性がチャレンジできるようになっていくと、会社にとっても新たな価値が生まれるのではないかと思います」