ユニセフ(国連児童基金)が昨年に発表した先進国などの「子どもの幸福度」の報告書。日本は子どもの幸福度の総合順位が調査対象の38カ国中、20位だった。分野別で日本は「体の健康」が1位だった一方、「精神的な幸福度」は37位と下から2番目という結果に。「子どもの貧困問題」の専門家で 、東京都立大学教授の阿部彩さんに調査の意味するところを聞いた。

日経DUAL編集部(以下、――) ユニセフ(国連児童基金)が昨年に発表した先進国などの「子どもの幸福度」の報告書で、日本の子どもの「幸福度」は総合評価では20位でした。一方、現在の生活への満足度や自殺率から算出される「精神の幸福度」が、日本はワースト2位でした。経済的に豊かな日本でなぜこのような結果となったのでしょうか。

阿部さん(以下、阿部) まず、日本は本当に豊かなのか、という点から始めましょう。「日本は経済的に豊かだ」という主張の根拠はGDP(国内総生産)ですよね。確かに2019年の日本の名目GDPは約5兆ドルと米国、中国に次いで世界3位の実力を持ってはいます。ただ、一人ひとりの幸福度に関係するのは1人当たりのGDPです。

 1人当たりのGDPで見ると、日本は2019年、名目値で4万ドル程度と世界25位です。1位のルクセンブルクの11万ドル、2位のスイス8万2千ドルと大きく引き離されています。1980年代あたりまでは確かに日本は豊かでした。でも、現状、今回のユニセフ調査の対象であるEU(欧州連合)やOECD(経済協力開発機構)の中で日本はそこまで「豊か」ではありません。