東京に向かう汽車の中で絵を描くことに目覚めた

 『かいぶつトンボのおどろきばなし』(小峰書店)という2002年の絵本ではトンボの生態や種類の見分け方をたくさんのイラストで紹介している本なのですが、かこは越前市時代からトンボを捕まえるのが大好きでした。トンボは羽に支脈という筋が通っているのですが、幼い頃のかこは、トンボを捕まえてはこの筋を一筆書きできないかなと挑戦し、「できた」と思うと「さよなら」と放してあげていたと話していました。

 そうして自然の中で大きくなったのですが、小学校2年生の6月10日、時の記念日に、一家を上げて東京に引っ越すことになりました。

 このくだりは、小学校6年生の卒業文集を基にした『過去六年間を顧みて』(偕成社)という本に詳しく書いてあります。

 ひと回り上のお兄さんが歯学の勉強をするために、先に上京していたのですが、この時に家族で東京に出ることになり、それまで自然の中で虫を追いかけたり草を取ったりして過ごしていた生活が大きく変わりました。

 汽車に乗ること自体が初めてで、なおかつ長い道中ですから飽きてしまわないようにと、クレヨンと紙をお父さんが用意してくれて、絵を描かせてくれたそうです。本の中では富士山が見えるとあって、「あのように美しいものを描き留めたいと思った」と記していますが、この時から絵を描くことに興味を持ち始めたようでした。