想像力豊かな女性に、ゲーム業界はぴったりの仕事

――社内に女性の管理職は少ないのでしょうか。

襟川 2013年に入社した当時は、女性の管理職は現在より少ない人数でした。ルビーパーティーブランドも、女性が多いにも関わらず、管理職はすべて男性。女性のためのゲームを作っているのだから、女性の感性が必要だと、徐々に女性を上に引き上げました。

 女性に管理職やプロデューサーを頼むと、最初は「私なんかできません」と躊躇されることが多いです。上の立場になれば責任も重く、広い視野も持たなければならない。イメージで長時間会社にいなければいけないとも思うようで、とにかく色々不安なようです。でも、その不安を払しょくしていけば、みんな実際は強いですからバリバリと活躍してくれます。そして上級職の女性が何人か出てくることで、私もやりたい!と、上昇志向のある女性が出てくるようになりました。

――今後ゲーム業界で活躍する女性は増えると思いますか?

 ルビーパーティーブランドは女性の比率が高いですが、社内全体でみると約3割です。プロデューサー、ディレクターの女性比率も5%に満たない。ゲーム業界全体を見渡しても、まだ女性のプロデューサー、ディレクターは少ないと思います。それでも、昔よりはかなり増えました。

 ゲームが国内で流行り始めた1980年代は、パソコンを所有している男性がゲームのメインユーザーでした。その中で、会長の襟川恵子は「なぜ男性が楽しめるようなシミュレーションやアクションしかないんだ。女性が楽しめるような、かわいくてきれいで、楽しい女性向けゲームが必要だ」と自分で作ることにしたんです。ただ、その当時は女性のゲーム開発者もプレイヤーも少なかったので作るまでに10年かかり、ようやく1994年に「アンジェリーク」が発売されました。その頃には、ファミコンの影響もあり女性のゲームユーザーも増えましたが、相変わらず開発者は少なかったそうです。

 あれから25年経ち、いまはスマホのおかげでゲームへの間口がさらに大きく広がったことで、女性のゲームプレイヤーも飛躍的に増えています。プレイヤーが増えればクリエイター志望者も増えますので、業界全体では女性クリエイターやプロデューサー、ディレクターは増加しているな、と感じています。女性が活躍する場はこれからさらに増えてくるはずです。

――どんな女性がゲーム業界に合うと思いますか?

 ゲームはいわば非日常なファンタジーの世界なので、想像力の豊かな人が合うと思います。女性の中で妄想するのが好きな人は多いと思いますが、ものすごく妄想力の高い人って想像力や感性がとても豊かで、世界観やキャラクターを作りこむのがうまい。そして、それとは別に、ファンの気持ちやクリエイター目線など、様々な角度から物事を見て、どうしていくべきかを自ら発信できる人が良いと思います。言葉で聞くと難しく感じるかもしれませんが、女性は普段から色々な立ち位置でふるまうことに慣れていますから、出来る人は多いと思います。

40歳でブランド長に。はじめて大勢の部下を持つ

――これまでのキャリアの転機を教えてください。

襟川 転機と言えば、ルビーパーティーブランドのブランド長になったときです。イベント企画会社では一番下っ端でしたし、光優でアセットマネジメントしていたときは上司が父で、部下が5~6人の小さな組織で仕事をしていました。40歳でブランド長になったとき、はじめて大きな組織の中で大勢の部下を持つことになったんです。

 段階的に経験をして地位を上り詰めたわけでもない、大きい組織でトップを経験したこともない、ゲーム業界についてもまだ把握できていない、という状況で、急に多くの部下ができる。 私で大丈夫かな?とも思いましたが、やるしかない!とも思いました。

 実はブランド長になる前に、メディア事業部の事業部長をやるように社長から言われていたのですが、まずは1年間、副事業部長としてこれから必要な知識や経験を詰め込めるだけ詰め込みました。その中で「やってやれないことはない」と思えたこと、「自分だけが完璧である必要はない。頼りになる仲間がたくさんいる」とわかり、覚悟を決めることができたのです。

 いまは仕事がとても楽しいです。年上の50代の男性社員から20代の女性社員まで、いろいろな年代の部下がいますが、みんなかわいい(笑)。この人たちとルビーパーティーブランドを女性向けゲームNo.1ブランドにするぞ!と気持ちを高ぶらせながら仕事ができることが、本当に幸せだと思っています。40歳という節目に、やりがいや生きがいを感じながらできる仕事に就けたことが、私の中でものすごく大きいです。もともとアニメや漫画、ゲームが好きですし、イケメンも二次元、三次元に関わらず大好き(笑)。エンターテインメント業界に関わっていられるのがうれしいし、楽しいですね。好きという気持ちは大きなパワーを生むと日々感じています。

 私が入ったことでブランドを引っ掻き回してしまった部分もあるし、失敗も多いです。でも、そのたびに得たものでブランド全体が変わっていき、新しいことにどんどんチャレンジしていこうという風土になってきているので、ブランドの業績も向上していますし、明るく良い方向に向かっていると思います。