感染予防に最も重要なのが手洗い

 つまりは手洗いとマスクを着けることであり、最も重要なのが手洗いです。「そんな当たり前のこと」と言わずにぜひ、徹底してください。手洗いの正しい方法については厚生労働省の公式サイトにも出ていますので改めてチェックするといいでしょう。

厚生労働省の公式サイトより
厚生労働省の公式サイトより

 またアルコール消毒はウイルスを死滅させることはできないけれど、かなり抑えることができると言われています。手洗いとアルコール消毒は両方やっておいたほうがいいでしょう。米疾病対策センター(CDC)では「手を洗った後にアルコール消毒をするように」としています。

 マスクはよく言われる通り、そこまで重要ではありません。自分が保菌者である場合に、拡散を最小限にとどめるためのツールです。それ以外の人が使う理由は、手にウイルスが着いた状態で直接口や鼻などを触り、粘膜に入るのを防ぐためです。

 なお換気も重要です。

 賀来満夫先生(東北医科薬科大学医学部感染症学教室特任教授/東北大学名誉教授)が2月26日に「新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック」を公開しましたが、その中に「感染症の伝播(うつる)を防ぐためには、部屋のウイルス量を下げるために、部屋の十分な換気を行います。日中は2~3時間ごとに窓や扉を開けるなどして部屋の空気を新鮮に保ちましょう」(原文ママ)とあります。

 基本的にウイルスは遺伝子である核酸(DNAかRNA)を中心に、その周りを蛋白(たんぱく)の殻(カプシド)が包む構造になっています。カプシドごと体内に入ることで増殖するのですが、空気中を飛ぶことで核酸からカプシドが離れ、感染力が弱まると考えられています。もちろん空気中のウイルス濃度を下げる意味もありますが、換気し風に当てることでウイルスの力が弱まるから一層大切だというわけです。ただし、閉鎖空間で空調を回しているだけでは、濃度が下がらない可能性もあります。

 新型コロナウイルスは主に飛沫(ひまつ)感染、接触感染により伝播(でんぱ)すると考えられています。よって、せきエチケットや環境消毒も重要になります。

 せきエチケットは、せき症状があるときにマスクを着用し、せきやくしゃみが出るときはティッシュで口と鼻をおおい(とっさのときは手ではなく二の腕で口と鼻をおおう)、周囲の人から顔を背け1メートル以上離れ、鼻汁やたんなどを含んだティッシュはすぐにごみ箱に捨て、正しい手洗いをすることです。

 環境消毒は家族がよく触れる場所(部屋のドアノブ・照明のスイッチ・リモコン・トイレのレバーなど)を消毒すること。1日1~2回、ドアノブ、テーブル、てすり、スイッチなど、手のよく触れるところを、薄めた漂白剤(0.02%次亜塩素酸ナトリウム水溶液)またはアルコールを含んだティッシュで拭きます。

 こうした基本的なところさえ守っていればある程度は防げますし、これができていれば、新型コロナウイルスだけでなく、その他の感染症の対策にもなると僕は思います。

最も大切なのは手洗いだといいます
最も大切なのは手洗いだといいます

■2ページ目で紹介した論文は妊娠後期に感染した妊婦を検証したもので、妊娠初期・中期に感染した妊婦については検証がなされていないため、本文に追記・修正しました。(2020年3月5日)
■中国の報告に関する記述を一部、修正しました。(2020年3月7日)

取材・文/山田真弓(日経DUAL編集部) 荻田さん写真/太田未来子 イメージ写真/PIXTA