妊婦さんのおなかの中にいる赤ちゃんは、半分は妊婦さん自身の、もう半分はパートナーのDNAですよね。このためパートナーのDNAを半分持つ赤ちゃんを「異物」と捉えて体内で「攻撃」しないように、免疫寛容という、免疫機能を抑制するメカニズムが妊婦さんに働きます。ですので、基本的に妊娠すると、病原体やウイルス感染細胞、がん細胞などの異物の排除をする「細胞性免疫」が下がります

 すると妊婦さんは新たな感染症や、ウイルス、がんなどに対して寛容(トレランス)な状況を体内に作っていることになり、赤ちゃんが育ちやすいと同時に、ウイルスやがん細胞も育ちやすくなります。

 よって、厚生労働省では新型コロナウイルスに関し、妊婦さんに対しては重症化しやすい人と同様に、風邪の症状や37.5度以上の発熱が2日以上続く場合(通常は4日以上)や、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合、帰国者・接触者相談センターに連絡するようにとしています。

 一方、医学雑誌「Lancet」電子版に2月12日に掲載された、中国武漢大学中南病院のHuijun Chen氏らの論文によれば、新型コロナウイルスによる母から子への垂直感染を示すエビデンスは確認されなかったことが報告されています。

産婦人科医の荻田和秀さん
産婦人科医の荻田和秀さん