日本人が苦手とする逆算型の思考で、SDGsを「絵に描いた餅」にしない

 だが実際のところ、目標と自分の生活があまりにかけ離れていると感じられたり、 「あと10 年あまりで達成できるのか、大風呂敷を広げすぎじゃないか?」と懐疑的になったりする向きはないだろうか。 SDGsには「貧困をなくす」「飢餓をゼロにする」のほか、「交通事故による死傷者を半減させる」といった壮大な目標も、数多く掲げられているからだ。

 これについて田瀬氏は「SDGsを理解するためには『ムーンショット理論』と『逆算(バックキャスト)思考』の2つを知る必要があります」と話す。

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 「ムーンショット理論」は、米国が1960年代初めに人類を月に立たせる「アポロ計画」 を発表し、1969 年、実際に有人宇宙船「アポロ11号」の月面着陸を実現したことから名付けられた。まず「あるべき姿」を高く打ち上げて、達成に何が必要かを「逆算」するという考え方だ。

 「SDGsを作るにあたってまず描き出されたのが、2030年の『目指すべき世界像』です。 17 の目標は、この世界像を実現するために何が必要か、を考えて作られ、さらに目標を達成するための具体的な取り組みが定められました。ゴールから逆算してプロセスを導き出したのです」

 多くの日本人は、コツコツ実績を積み上げるのは得意だが、逆算型の思考には慣れていない。このため、SDGsを単なる「絵に描いた餅」だと思ってしまうかもしれないが、決してそうではない。

 「SDGsを採り入れることで、私たち日本人、そして日本企業は、成長への大きなチャンスを得られるでしょう」

 次回は、田瀬氏の語るSDGsのビジネスチャンスについて迫ってみたい。SDGsが企業にもたらす恩恵と課題について、じっくり考えよう。

取材・文/有馬知子 イメージ写真/PIXTA