教育の問題点や理想の姿を探るリレー連載。今回取材したのは、少人数の対話型オンライン授業のプラットフォーム「スコラボ」を立ち上げた前田智大さん(Mined代表取締役)です。灘高時代には国際生物学オリンピックで銀メダルを受賞し、東大を経て米マサチューセッツ工科大学(MIT)で電子工学を専攻した前田さん。前編では、スコラボの特色や、研究者志望だった前田さんが教育分野での起業に至った経緯などを聞きました。

<前田智大さん>
【前編】灘→東大→米MIT 日米の教育の違い知り起業決意 ←今回はココ
【後編】とことん興味を掘り下げる経験が学力向上にもつながる

子どもが自分の興味に合わせて選べる対話型オンライン授業

 前田さんが2021年に立ち上げたスコラボは、主に小・中学生を対象とした対話型のオンライン学習サービス。設置クラスの数は260を超え、受講者は「知られざる地球の中の世界」「ゲームで量子コンピューターの世界へ」「ユーモアのセンスは作れる! お笑い学入門」といった多様なテーマの中から、好きなクラスを自由に選ぶことができます。料金は1コマ980円からの授業料のみで、入会金や月謝はかかりません。

 また、双方向にコミュニケーションが発生することもスコラボの特色の一つです。オンライン学習サービスは、多数の生徒に向けて先生が一方通行で話すものも少なくありませんが、スコラボは少人数クラスで、先生が子どもたちに発言を促しながらアクティブに授業を進めていきます。

 「子どもたちに自分が熱狂できる学びを見つけてほしいというのが、スコラボを立ち上げた理由です。小学1、2年生くらいまでの子どもは『なぜ、こうなるの?』『もっと知りたい』といった好奇心にあふれているのに、学年が上がるにつれて勉強はつまらないと感じる子が増えてしまう。これは、従来の教育では学べるトピックが限られていることが一因であるように思います。学校や塾では決まったカリキュラムが用意されていますが、本来ならば子ども一人ひとりの興味に合わせた学びがあってしかるべきです。子ども自身が興味のあるテーマを選んで、少人数の対話型スタイルで学べるオンライン授業であれば、主体的な学びを実現できると考えました」

 スコラボの授業では国内外のトップ大学の学生や研究員、各分野の専門家などが講師を務め、受講者の定員は3~6人程度が中心の完全少人数制となっています。

 「講師が子どもたちに質問を投げかけながら進行し、子どもが自分の頭を使って考える授業設計にしているので、小学校低学年の子どもでも集中して学ぶことができます。自分の好きなことについて語り合える人が身近にいなかったとしても、スコラボなら同じ興味を持っている子とつながることができ、情熱を持ってその分野に取り組んでいる講師にも出会える。学びにはソーシャルな一面もあり、このような出会いの場をつくることをスコラボでは重視しています」

MIT Media Labの修士課程を修了後、当初目指していた電子工学の研究者になるのではなく、日本で起業する道を選んだ前田さん
MIT Media Labの修士課程を修了後、当初目指していた電子工学の研究者になるのではなく、日本で起業する道を選んだ前田さん