従来の教育に変化の波を起こそうとしている人たちは、今どんな点を課題と捉え、何を変えたいと思っているのか――。インタビューを通じて、教育の問題点や理想の姿を探るリレー連載。2回目に登場いただくのは、モルガン・スタンレー・ジャパン(当時)や、米ゴールドマン・サックスなどで勤務後、専業主婦を経て、2022年秋、長野県白馬村に中高一貫のインターナショナルスクールを開校予定の草本朋子さん。自身のキャリアや英語教育、白馬に学校をつくろうと思った理由、今の日本の教育の課題などについて、前後編に分けて聞きました。

<草本朋子さん>
【前編】勉強が必要な理由を子に「腹落ち」させるのは大人の責任 ←今回はココ
【後編】自分の提案で大人を変えた体験を持つ子は強い

自身は地方の公立育ちで東大へ 子育てもあえて地方を選んだ

 「東大に入学するまで、東京の有名中高一貫校の名前も知らなかったです」。熊本県出身で公立の小・中・高校で学び、東京大学経済学部を卒業した草本朋子さん。第1子出産後は専業主婦になり、東京都内や、シンガポールなどで暮らしていましたが、上の子が年長、2番目の子が年少の2009年に長野県白馬村に移住しました。「中学受験の知識も何もない状態で、東京で子どもを育てると、踊らされてしまう自信があった(笑)」と、振り返ります。

 現在、白馬インターナショナルスクール設立準備財団代表理事として、2022年秋に中高一貫のインターナショナルスクール(初年度は中1と中2にあたる学年のみ募集予定)を開校すべく奮闘している草本さん。そもそも「教育畑」は歩んできていません。大学卒業後、モルガン・スタンレー・ジャパン(当時)に勤務した後、米カリフォルニア大学バークレー校で経営学修士(MBA)を取得。「様々な産業に関わることができ、企業の成長をサポートできる金融業界に自分は向いている」と、再び金融畑へ戻り、ゴールドマン・サックス証券東京支店(当時)、NY本社で投資業務に従事した後、第1子の出産を機に退職しました。

 その後、オーストラリア人の夫の仕事の都合で、シンガポールに2年半ほど暮らしました。「長女がオーストラリア系のインターナショナル幼稚園に通い、そのときに国際バカロレアという言葉と存在を初めて知りました」

 シンガポールから帰国後は、夫の仕事の拠点があった東京ではなく、あえて白馬に住みました。「旅行で行ったときに、日本とは思えない壮大な景観に圧倒されました。子どもが小学生ぐらいまでは、自然の多い、白馬のような場所でカエルを追いかけて育つほうがいいかなと考えて、夫に『白馬に住みたい』と伝えました。夫は、週に2~3日ずつ東京と白馬を往復することで、仕事を継続できました」

小学校は学校の勉強だけで、後に困ったことはなかった

 東京に比べると塾や学校などの選択肢がほとんどない、という状況に不安はなかったのでしょうか。「私自身も高2で米国に留学した以外は地方育ちで、前述のように東京の教育事情にも詳しくありませんでした。自分を振り返っても小学校は学校の勉強だけで、後に困ったはことなかったです。日本の文部科学省が作っているカリキュラムは、きちっと下から積み重ねることで、知識とスキルを身に付けられる、本当によくできた内容だと思います。

 学校でちゃんと学んでいれば、例えば中学から海外の学校に行くことになっても、語学の問題は別として、それ以外の基礎的な学力という意味では心配しないでいいと感じました。それよりも大自然に触れて、自然に対する好奇心が芽生えるような環境にいることのほうが大事だと自分には思えました

 白馬村に移住後、第3子にも恵まれ、今や子どもたちは高3、高1、小6に成長しました。なぜ学校をつくろうと思うほど教育に関心を持ったのでしょうか。1つは自身の子どもたちの教育をどうするかという視点から始まった興味、もう1つは、県立白馬高校の存続危機がきっかけだったといいます。

豊かな自然に魅了されて、白馬村で子育てすることに決めた
豊かな自然に魅了されて、白馬村で子育てすることに決めた

次ページから読める内容

  • 英語力をどう育むか 自分の経験と子育てで感じたこと
  • 日本の教育の課題とは
  • きっかけは、白馬高校の存続の危機
  • 今の教育の「最大の課題」とは
  • 「やらなきゃいけないから勉強しなさい」は大人の怠惰

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