教育関連分野で起業をしている「教育起業家」。従来の教育に変化の波を起こそうとしている人たちは、今どんな点を課題と捉え、何を変えたいと思っているのか――。インタビューを通じて、教育の問題点や理想の姿を探るリレー連載。

今回は前編に続き、2006年にインターナショナルプリスクールを設立、22年4月にはオルタナティブスクールを開校予定で、「京大工学部卒・MBA取得・銀行員からの保育士」という異色の経歴の持ち主でもある堺谷武志さんが登場。親としての自身の失敗談も併せて、子どもが「好き」を見つけるために、親が注意したい点などを聞きました。

<堺谷武志さん>
【前編】 嗅覚や勘で動ける子を育てる 工学部、銀行員から教育へ
【後編】親が「好き」を誘導すると、子はそれを嫌いになる ←今回はココ

「親が気に入ること」という条件付きになってない?

 「子ども時代に、何かにはまる経験や、はまったときに夢中になる感覚を味わっておくことが何より大切。それを体感していないと、幸せや好きの基準を自分の中に作ることができず、味気ない人生になる可能性があります。10~12歳ぐらいまでをいかに遊び抜くか、楽しみ抜くか、が重要だと感じています」

 インターナショナルスクール「キッズアイランド」代表で、現在、東京・世田谷にオルタナティブスクール「ヒロック初等部」(インターナショナルスクールなどと同様の扱いで、学校教育法第1条が規定する小学校ではないスクール。初年度の募集は低学年のみ)の開設準備中の堺谷武志さんは言います。「大人になってから『これまで大人の言うことを素直に聞いて育ってきたけど、自分では何がしたいか分からない。どうすればいいでしょう』と言うのは遅過ぎるし、危険です」

 とはいえ、「うちの子、熱中できることが見つからないんですが……」という悩みを抱える親も少なくありません。「そういう場合は、『親が気に入ること』という条件付きになっていないか確認したほうがいいかもしれません」

 堺谷さんは、現在19歳になる娘の父親でもあります。「私も人のことは言えなくて、親としては『あー、やっちゃった』という失敗をしでかしたことはあります。娘は結果的に、親がノーマークだった道へ進みました」