教育の問題点や理想の姿を探るリレー連載。今回ご登場いただくのは、そろばん式暗算を学べるアプリ「そろタッチ」を考案した山内千佳さんです。外資系金融機関で働いたのちに、そろばん教師の資格を取得して教室を開き、次女が8歳のときにはトルコで開催された暗算オリンピックに参加させた経験もある山内さん。前編では、IT時代にあえてそろばんに注目した理由や、「そろタッチ」の開発に至るまでの経緯などを聞きました。

<山内千佳さん>
【前編】IT時代こそ日常に生かせる「暗算力」が子の武器に ←今回はココ
【後編】「教えない教育」に変えたら、子どもが自ら学び始めた

IT時代だからこそ、ITに頼らない「暗算力」に価値がある

 山内さんが代表取締役会長を務めるDigikaが2016年にリリースした「そろタッチ」は、タブレットでそろばん式暗算を学べるアプリ。国内約200教室(ネット受講コースもあり)、国内外10カ国・地域で展開中です。

 IT化が進んだ現在は、計算はコンピューターで処理できる時代。この時代に山内さんがあえてそろばんや暗算に注目するようになったのは、シティバンク銀行の東京支店でデリバティブ商品の開発やトレーディングに従事していた頃のある出来事がきっかけだったといいます。

 「金融商品の売買の判断をするトレーディングルームでは、海外で数学や金融などを学んできた外国籍の人やMBA取得者といった、優秀なトレーダーが何人も働いていました。その中で周囲から一目置かれていたのが、暗算が得意な日本人男性だったのです。英語で『そろばん』を意味する『アバカス』が彼のニックネームでした。

 当時すでに計算はコンピューターでできる時代でしたが、周囲のトレーダーが『これを計算してくれよ』と頼むと、彼は難しい計算を一瞬で暗算して答えていて、この人はすごいな、と思っていました。世界で予想外のことが起きて市場が大きく動いたときなど、マーケットからプライスが消え、自分のポジションがわからなくなってしまうことがありました。自分の頭でパッと概算ができる暗算力があると、テクノロジーに頼れない局面でも正しい判断ができ、周囲の信頼を得られる。秒単位で数千万円もの利益や損失が出る金融の最先端で、暗算力が重視されるというのがとても印象的でした」

タブレットでそろばん式暗算を学べるアプリ「そろタッチ」
タブレットでそろばん式暗算を学べるアプリ「そろタッチ」

次ページから読める内容

  • 「日本のそろばん技術は世界でもトップレベル」は思い込みだった
  • 海外で目にしたのは、能力開発まで視野に入れて楽しく学ぶ教育法

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