教育の問題点や理想の姿を探るリレー連載。前編に続いて福岡市にある人気学習塾「唐人町寺子屋」の鳥羽和久さん(寺子屋ネット福岡代表取締役)に登場してもらいます。塾長、そして単位制高校の校長という立場で、20年以上さまざまな小中高校生の親子に関わり、親には「清く正しい子育てから、身を引いてください」(著書『親子の手帖』から)とドキッとする言葉を投げかける鳥羽さん。後編では、教育や学校に関して課題と感じること、親子の関係、親に伝えたいことなどを聞きました。

目的ありきの教育では、想定内の発明しか生まれない

 現在の日本の公教育について、「課題と感じることはいろいろある」という鳥羽さん。なかでも、国の打ち出す教育方針が実業直結一辺倒である点には、大いに疑問があるそうです。

 「すぐに役に立ちそうな学問ばかりを重視し文学や哲学を軽んじる姿勢は、とても近視眼的で、多くの大人や学校の先生までもがそれでいいと思っていることを情けなく感じています。科学者の友人は、『目的を持たないものづくり』こそを大事にしているそうです。

 最初から『人の役に立つもの』のようなゴールを定めたら、その範囲内でしか発明が生まれない。目的なく生まれたものが独り歩きし始め、偶然的な出会いを経て全く想像もつかない結果になったときの方が、圧倒的に革命的な発明が生まれる。だから、最初から目的のある教育はかえって志が低いと言わざるを得ません。むしろ分からないことをもっとやらないといけないと思うし、それを伸ばすためには文系的な思考力がベースになると私は考えています。今や、学校の授業では、美術や音楽ですら最初から目的やゴールを設定させています。結果が分からないことをやってみようという勇気が、なぜ大人にないのでしょうか」

中1・中2対象のサマー合宿で生徒たちが藍染め体験をしている様子。染めたハンカチの出来はバラバラで、子どもたちはそれぞれ自分が染めたハンカチを持ち帰った
中1・中2対象のサマー合宿で生徒たちが藍染め体験をしている様子。染めたハンカチの出来はバラバラで、子どもたちはそれぞれ自分が染めたハンカチを持ち帰った

 公教育の現場に目を向けると、気になるのは先生を取り巻く状況です。

 「昔、学校の先生は怖い存在で、今ならパワハラと認定されるような言動をするなど、マイナス面ももちろんありました。しかし、今は先生という存在に威光がなく、親は先生を信頼することなく悪口を言うし、それを聞いた子どもは先生から学ぼうという気持ちがなくなるといった悪循環があります。また、『先生と生徒は対等』がトレンドになっていますが、本来、『教える・教えられる』という関係には、尊敬や信頼、そして『この人は僕の知らないことをたくさん知っている』という、ある種の畏怖の念が必要だと思っています。そのバランスが今は完全に壊れているんですよね。さらに、先生という職種に人気がなくなって採用倍率がどんどん下がり、先生自身が自信を持てなくなっているという面があるかもしれません。学校の無力化が進んでいると感じています」

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  • 生きていく力をつけるための「国語塾」
  • 親の「企て」は子どもに見抜かれている
  • 親の価値観は、良くも悪くも子どもの土台になる

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