教育の問題点や理想の姿を探るリレー連載。ご登場いただくのは、コロナ以前の2016年からオンラインで子ども向けのリベラルアーツの学びの場を提供しているCo-musubi創設者、井上真祈子さん(一般社団法人ダイアローグ・ラーニング代表理事)。2児の子育て経験などをきっかけに教育分野に関わり、「女性の社会進出が進んだのに、教育を取り巻く環境が変わっていないため、子育て世帯の負担がどんどん大きくなっている」と指摘する井上さんに、今回の前編では、既存の仕組みで家庭に負のサイクルが生じる理由などについて聞いていきます。(DUAL特選シリーズ/2022年2月25日収録記事)

<井上真祈子さん>
【前編】忙しいと子に指示出すしかない 「負のサイクル」が課題 ←今回はココ
【後編】小学生のリベラルアーツ 学びの範囲広げれば子は後伸び

自分の子ども時代を振り返って

 「私自身、幼い頃から大学を卒業するまで、学校というものに苦痛を感じていました。勉強を頑張らなくてはいけない理由を自分の中で見つけられなかった、また、みんなで同じことをしなくてはいけないことが苦手だった、というのが大きな理由です」

 両親がやっている薬局と介護施設経営をいずれ継ぐために、薬剤師にならなくてはいけない、という未来が決まっていたという井上さん。「そういう理由で『頑張りなさい』と言われても、頑張れなかったです」。薬学部に進み、薬剤師にはなりましたが、家業は継がず、結婚。子どもができた時点で井上さんは、ずっと違和感を抱いていた「学校」や「教育」について、さらに深く考えるようになりました。

 「子ども時代は、人生のうちでとても大事な時期。でも、もしかして自分の子が自分自身のように学校が苦手だとかなりハードな日々を送ることになります。もっと伸び伸びと、その子らしく、健やかに、後伸びするような可能性のある子育てをしたい、と感じました。ただ、学校を理想の姿に変えることは、自分にはコントロール不可能なことだとも感じましたし、たとえ何か変化を起こせたとしても、自分の子どもが学ぶときには間に合わないと思いました。

 また、もし子ども時代の自分自身に、自分の考えを言語化して大人に伝えたり、苦しいときに突破したりする力があれば、もっと違った結果になったのではないかとも感じていました。そこで、自分で考える力や生きる力を家庭で育むことに挑戦してみよう、という考えにシフトしました

 井上さんは、そうした子育てを実現するために、1カ所にとどまるのではなく、移住しながら育てることを夫に提案。会社員の夫が国内外の転勤を希望することで、福岡、静岡、欧州の小さな国であるルクセンブルク、東京などさまざまな場所で子育てするという望みがかないました。井上さんは、薬剤師として勤めたり、専業主婦をしたりしながら、現在は大学生と中学生になった2女を育て、その過程で、住む土地ごとに、その土地ならではの学びは何か、を追求してきたと言います。

 井上さんが教育分野に関わるきっかけになったのは、ルクセンブルクでの経験でした。

次ページから読める内容

  • 「コミュニティ」を理想とした理由
  • 今の家庭が抱えているモヤモヤの原因
  • 内発的動機のためには環境設定が大事
  • 教育事業は特殊なビジネスモデル
  • 大人の「アンラーン」がキーワードに

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