共働きが当たり前の時代になったとはいえ、ワーキングペアレンツの悩みはつきません。特に親になる前の自分と比べて「仕事の効率が落ちているのでは。期待に応えられていないのでは」と悩む人は多いのではないでしょうか。そこで、2021年11月27日にオンラインで開催されたWOMAN EXPO2021 Winterのセミナー「第2回 Working Parents Forum」で外資系総合コンサルティング企業アクセンチュアのワーキングペアレンツたちが語ったパフォーマンスを出すためのポイントや両立の工夫、同社の働く親への施策を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

第1部 ワーキングペアレンツがパフォーマンスを出せる環境とは?

 2部構成で開催された今回のセミナー。第1部に登壇したのはアクセンチュア マネジング・ディレクターの大河原久子さんです。インタラクティブ本部 公共サービス・医療健康サービス統括である大河原さんは、行政等のDXプロジェクトなどを担当すると同時に、アクセンチュア社内のインクルージョン&ダイバーシティの推進やワーキングペアレンツの支援にも携わっています。プライベートでは2人の小学生のママ。自身のキャリアを振り返りながら、ワーキングペアレンツがパフォーマンスを出せる環境について、個人のマインドと会社の制度の両面から解説しました。

<b>大河原久子さん</b><br>アクセンチュア インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター<br>2002年に新卒で入社。2020年からインタラクティブ本部公共サービス統括として、行政等のデジタル化戦略、サービスデザイン、広報・マーケティング、組織・業務DXのプロジェクトなどを担当。小学生の2人の子どもと夫の4人家族
大河原久子さん
アクセンチュア インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター
2002年に新卒で入社。2020年からインタラクティブ本部公共サービス統括として、行政等のデジタル化戦略、サービスデザイン、広報・マーケティング、組織・業務DXのプロジェクトなどを担当。小学生の2人の子どもと夫の4人家族

 まず紹介したのが、大河原さん自身が親になってからのマインドと働き方の変化。そのポイントは次の3つです。

1 タイムマネジメント

「時間制約がある中で成果をあげるには効率アップは欠かせません。資料作成の方法も産前とは変わり、完璧ではなくても早い段階から共有して上司やクライアントと対話しながら仕上げていく方法を取れるようになりました」

2 ポジティブシンキング

「出産前は、自分の価値の全てが仕事にあると思っていました。しかし親という役割を持つことになってからは家庭にも確固たる基盤があると思えるようになり、仕事で少々嫌なことがあっても、翌日にはポジティブに切り替えられるようになりました」

3 自分のキャリア

「時間で勝負できなくなってからは、今後どのようなスキルを軸にキャリアを築いていくかを出産前以上に考えるようになりました」

 「このように話すと産前から産後の働き方にスムーズにスイッチできたように思われるかもしれませんが、実際は毎日がいっぱいいっぱいでした」という大河原さん。失敗も経験し、「普段から余白を作っておかないと、不測の事態に対応できない。状況に応じて仕事の仕方を変える柔軟性も必要」ということを学んだそうです。

 大河原さんは、働くママのつらさの原因として「とにかく頑張ってしまう」ことを指摘します。「頑張りには限界が来ます。すると『こんなに頑張っているのになぜできないのだろう』という思考に陥り、つらくなってしまいます。感情をコントロールして、『自分はできている』という気持ちに持っていくこともパフォーマンスを創出するために大切だと思います」

 また、家庭と仕事がうまく回っているワーキングペアレンツには・仕事や家庭に対する目標がある、・上司や同僚と信頼し合っている、・手段にこだわらない、・自分の物差しを持つという4つの共通点があることも紹介しました。続いて会社としてどのような施策が必要なのかに触れていきます。

ワーキングペアレンツが特別ではないというカルチャーが大切

 アクセンチュアでは2016年から週5日の在宅勤務や、週3日・計20時間以上の短日・短時間勤務を行っており、フレキシブルな働き方ができる仕組みが整っています。在宅勤務も多くの社員が当たり前に実践しています。そのためワーキングペアレンツが在宅勤務をしても特別扱いをされることはなく「遠慮したりや居心地の悪さを感じることはない」と大河原さんは話します。

 「子育てに限らず趣味や介護、仕事の新しいチャレンジなど、誰にも人生で大切なタイミングはあります。それをかなえるために会社の制度を利用し、チームでも工夫をしてパフォーマンスを上げようとするのは当たり前のこと。このようなカルチャーがあることは制度よりも重要だと思います」

 ワーキングペアレンツ同士の関係作りを会社が後押しすることも重要だと大河原さん。アクセンチュアで活用されているのが社内SNS「育児中の会」です。「働く親としての不安や悩みをオンライン上で他のワーキングペアレンツに相談したり、役立つ情報を共有したりする場になっています。交流を通してさまざまな選択肢に触れることが心の支えになっています」

 大河原さんは「今後はワーキングペアレンツの課題や解決ノウハウを管理職もシェアすることが大切」とも話します。「経験者の声を聞くことで自分の部下の悩みを解決できることもあるのではと思います。うまくいっているプロジェクトの声をヒアリングし、共有することも大切になるでしょう。

 仕事と家庭を両立させてパフォーマンスを出すことに正解はありません。自分の価値観や周囲の環境によっても方法は変わっていくでしょう。今不安を感じている人も、1つの考え方にこだわるのではなく、自分らしい方法を見つけて仕事も育児も楽しんでほしいと思います」