親になり価値観に大きな変化。上司のアドバイスで仕事のやり方を変更

 山口さんは親になって、価値観に大きな転換があったと話します。

山口 子どもが生まれたころは、研究競争が激しいカナダの大学にいて、私も国際的な業績を出さなくてはと週末も仕事をする日々でした。しかし子育てが始まると以前の働き方を続けることは無理だと理解し、「子育ては大変だけど楽しい」というマインドに。人生の優先順位にも変化が出て、子どもと過ごす時間が一番大切になりました。

 その結果、子育て以外の時間を使ってどれだけ成果を出せるかを考えて仕事をするようになりました。他人からの評価よりも、自分がどんなことを世に残していきたいかに重きを置くようにもなりました。これは私の人生における価値観の大転換だったと思います。

<b>山口慎太郎さん</b> <br>東京大学経済学部・政策評価研究教育センター教授<br>カナダ・マクマスター大准教授、東大准教授を経て2019年から現職。ワーク・ライフ・バランス、労働市場の男女間格差、幼児教育などを経済学的手法で研究している。内閣府・男女共同参画会議議員などの政府委員も務める。小学生の男児の父。2019年に上梓した『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)が、サントリー学芸賞(政治・経済部門)を受賞
山口慎太郎さん
東京大学経済学部・政策評価研究教育センター教授
カナダ・マクマスター大准教授、東大准教授を経て2019年から現職。ワーク・ライフ・バランス、労働市場の男女間格差、幼児教育などを経済学的手法で研究している。内閣府・男女共同参画会議議員などの政府委員も務める。小学生の男児の父。2019年に上梓した『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)が、サントリー学芸賞(政治・経済部門)を受賞

 価値観の変化は高橋さんにもあり、仕事のやり方を変えるきっかけになったそうです。

高橋 復帰後、しばらくは復職前の自分を物差し(価値判断の基準)にして働いていました。そのため仕事のゴールを復職前の自分が求めるものにしてしまったり、全部自分でしなければと思ってしまったりして、最初の2~3カ月はとても大変でした。仕事が時間内に終わらないので、子どもが寝た後に仕事をすることも。疲労やストレスがたまって、夫に当たってしまうこともあったのです。

 そんなときに上司が「最近元気ないね」と声を掛けてくれました。私も「これは正直に打ち明けよう」と思い、状況を相談したところ、「全部自分でしようとするのはよくない。自分でしなければならないことはあるが、他のメンバーや上司に頼ることも必要だ」というアドバイスを受けました。

 そのアドバイスをもとに、タスクを棚卸しし、自分がすること・今すぐすること・他のメンバーに頼むこと等に分類することで、困った状況を脱出できるようになりました。