ワーキングペアレンツたちの両立の工夫や体験を聞いていく本連載。今回は外資系総合コンサルティング企業アクセンチュアで働くシニア・マネジャーママと、マネジャーパパが対談。短日勤務制度を利用しての働き方や、夫婦の家事シェアバランス、キャリアアップへの思い、ワーキングペアレンツとしての課題を語り合いました。

溝川貴大さん
アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部 マネジャー 2008年に新卒で入社。フルタイムで働く妻と10歳、5歳、3歳の子どもとの5人家族。子どもたちが生まれたときにはそれぞれ9~12カ月の育休を取得した。保育園の送迎のための時短勤務経験もある。現在は完全リモートワークで働き、保育園の送迎は保育園の送りは溝川さん、お迎えは妻が担当している。

高橋扇香さん(高ははしご高)
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 シニア・マネジャー 2011年に新卒で入社。2020年に出産し、10カ月の産・育休を経て復帰した。1歳半の男の子とフルタイム勤務の夫との3人家族。短日短時間勤務制度を利用しながらプロジェクトのリーダーとして働いている。現在は夫婦共にリモートワークで、保育園の送りは夫、お迎えは高橋さんが担当している。

3児のパパは10年前に育休を決意。人事の後押しで長期取得

編集部(以下、──) 溝川貴大さんは3人の子のパパで、3回の育休経験があると聞きました。しかも1人目では9カ月間、2人目では11カ月間、3人目では12カ月と長期間取得されています。1人目が生まれたのは10年前。社会的には男性が育休を取るという意識はあまり広がっておらず、取得するとしても数日程度なのがほとんどという状況でした。そんな中、長期の育休を取得しようと思ったきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

溝川貴大さん(以下、溝川) 妻の妊娠中に制度の存在を知ったことがきっかけです。「共働きなのに、育児を妻一人に任せるスタンスでよいのか」と思うところもあり、私も育休を取って一緒に育児をしようと思いました。手掛けていたプロジェクトが終わった段階で休暇に入ったので、生まれてすぐとはいきませんでしたが、生後3カ月から1歳まで取得しました。

 当時は周りの男性に長期の育休を取った前例はなく、上司に相談したときも、実は短めにできないかと言われました。私自身も長く取れるかは不透明な状況でした。しかし人事部からの後押しもあり「エイヤ!」と9カ月取得しました。

── 数日から1週間程度だと妻のお手伝いで終わってしまい、主体的に動くまではできなかったという声をよくききます。9カ月間取得すると、しっかり育児にコミットできたのではないでしょうか。

溝川 子どもと密接な関係を築く上で必要な時間だったと思います。その後、2015年から「Project PRIDE」というアクセンチュア内の働き方改革が始まり、男性の育休取得が促進されるようになりました。会社のカルチャーも大きく変わったので、2人目、3人目の時は周囲の理解を得やすかったですね。今では私が後輩男性に「育休を取る・取らないは夫婦で話し合って決めること」と伝えた上で「だけど、子どもとの絆を築くためにはぜひ取ったほうがいい。復帰後の心配もいらないよ」と「布教」しています。

── 高橋さんは昨年出産し、10カ月の産・育休を取得しました。産・育休中は会社の情報が入ってこなくなることに不安はありませんでしたか?

高橋扇香さん(以下、高橋) それが、初めての子育ての大変さに追われて、会社のことを考える余裕もなかったんです(笑)。復職する段階になって「仕事をするってどんな感覚だったかな」と意識を切り替えたという感じです。

溝川 私が初めて取った10年前当時はパソコンを持ったままだったおかげで会社の様子は分かるものの、やはり仕事のことが頭の片隅に残ってしまい、復帰後はどうなるのだろうと心配でした。周りに育休を取っている男性がいなくて、復職後に関する情報がなかったせいかもしれませんね。

 その時に不安だった経験も踏まえて、今は先輩ワーキングペアレンツとして、職場の後輩からの相談に積極的に答えています。育休や時短勤務を取得する人からはキャリアへの不安、子どもがいる人からは仕事と家庭の両立について聞かれることが多いですね。

 私自身、1人目の時には自分のプライベートな時間が減少したことへのストレスがありました。子どもが増えるにつれて、家事が回らない、仕事時間が足りない、きょうだいゲンカが絶えないという悩みも出てきています。それでもなんとかなっている私に相談することで、「子どもが3人もいる溝川さんが大丈夫なら、うちもどうにかなるだろう」と希望を持ってほしいという思いで話をしています。