それまで特に問題なくこなせていた日常が、ライフステージの変化とともに訪れた想像を超えるできごとの連続から、コントロール不能のように思えてしまう。そしてそこから思わぬ負のスパイラルに陥る…。外資系総合コンサルティング企業アクセンチュアで働く1児のママ、Iso H.さんも、そんな状況下で、それまでなんとなく“他人事”と感じていた、自分の得意分野で自己肯定感が低くなってしまう経験をしたという。そんな状況を“変革”すべく、Iso H.さんが起こした行動~工夫について、またその経験を経たからこそ抱く「これからの想い」を聞いた。

想定通りに進んだことと、進まなかったこと

Iso H.さん
Iso H.さん
ソング本部 戦略・経営コンサルタント マネジャー
新卒で医療統計データ・市場調査会社に入社。さらなるキャリアアップを見据え、2018年にアクセンチュアに経験者採用で入社。19年~20年に第1子出産のため産休・育休を取得。復帰後21年にマネジャーに昇進。現在は、ヘルスケア・飲食メーカー業界を主に担当し、データ・アナリティクスを活用した業務改革の推進に従事、チームを管理している。自らの経験を活かし、育休から復帰する社員を対象にしたワーキングペアレンツ支援ランチ会の運営にも関わっている。3歳の子どもと夫との3人家族

 3歳になったばかりの男の子を共働きで育てるIso H.さん。2018年にアクセンチュアに経験者採用で入社し、19年に出産。産休・育休を経て、コロナ禍の20年初夏にフルタイムで職場復帰。その復帰と同じくして、データ・ドリブン・コンサルタントとしてAIグループに異動となる。翌21年マネジャーに昇進し、現在は大手飲料メーカー向けの顧客起点でのマーケティング高度化支援プロジェクトで数人のマネジャーたちと共に部下を率いている。

 データ・ドリブン・コンサルタントの役割は、AIや機械学習を活用したデータ分析をもとに、クライアントの課題を見極め、ビジネス戦略や行動計画を立案から、業務改革を支援すること。常にクライアントの課題と向き合い、必要な新しい情報・データを入手し、整理・統合・分析し、そこから得られる示唆らを業務に適用するため、専門的な知識や経験が求められる難易度の高い仕事だが、その分やりがいも大きい。また、プライベートでは、育児に携わっており、勤務時間として割ける時間に制約があるライフステージに立っている。そのステージも3年目となり、いろいろな部分に余裕が出てきているが、このライフステージに立った当初は、その時間管理と、思ったような成果が出ない状態に苦労したという。

 「異動直後の20年5月、ちょうど新型コロナ感染症の緊急事態宣言が発令された直後で保育園は入園式だけ出席した後、休園になりました。まだ0歳の子どもを横に寝かせながらまだ慣れない仕事をしなければならず、仕事だけに専念していたころに比べると、思ったような成果が出せないと感じていました。また、仕事に集中し、子どもが泣いていてもすぐに構ってあげられないとき、子どもにも申し訳なく、仕事も育児も中途半端で自己肯定感がどんどん下がっていくような状態でした

 転職した当初より想定していたマネジャーへの昇進。そのタイミングは、たまたま産休、育休を経た後であり、仕事以外の経験も積んだ分、自分自身への期待もあったが、昇進後に担当した最初のプロジェクトでは、チームにおいて思ったようなパフォーマンスが表れてこないことを経験する。一日のうちに仕事に割ける時間に制約がある中で、あれも、これもと思ううちに視野が狭くなってしまい、期せずして仕事を抱え込んでしまう……、といういわゆる“悪いスパイラル”に陥ってしまっていた。

 そんな状況を変えたのは、自ら動いて作り出した3つの工夫だ。

1つ目の工夫:相談と対話から再確認された信頼とプロジェクト変更

 アクセンチュアでは、業務上の上司以外にも、「ピープルリード」と呼ばれる、各社員が自分のキャリアを相談できる先輩社員の担当が付く。Iso H.さんが取った状況を変えるための第一歩は、上司とピープルリードとの対話だ。

 「マネジャーとして情報や状況がよく見える立場にいるからこそ、当時のプロジェクトを、育児・家事で時間に制約のある自分がその当時の働き方で担当し続けることに疑問を持っていたんですね。その疑問を上司とピープルリードに共有しました。また、関連する他プロジェクトの状況も把握していたので、そちらのほうがより高いパフォーマンスが出せる可能性についても話しました。というと冷静だったように思われるかもしれませんが、当時は、まだ負のスパイラルの最中で、自信も失っていた状態。当然不安も大きかった。でも、上司やピープルリードは、まず私の話を聞いてくれました。その上で、責められるのではなく、『アサイン(配属先)を変えよう』と提案してくれた。自分を理解してもらえた上に、納得できる解決策までもらえて、目の前が明るくなりました」

 以前は想像もしていなかった状況に自分が陥ってしまったという状況から、改めて自身のキャリア観について考え、明確に人に伝えることで、日常のコントロールを自分の手に戻していったIso H.さん。「どのようなキャリアや働き方を希望しているのかを、事前にピープリードや上司に伝えて、ライフステージに合わせて参画するプロジェクトを調整していただくことが重要だと実感しています。自分自身が働きやすい環境を整えていくためには、上司・同僚・部下の協力を得ることが大切ですし、サポートを求めれば応えてくれる仲間が周りにたくさんいることが心強く感じています。不安もありましたが、ピープルリードに相談したことは正しかったです」と、今、笑顔で振り返る。