情報不足や誤解から育休取得をためらうことを減らしたい

―― 高橋さんは社内の男性の育休取得を推進する活動をしていますね。

高橋 アクセンチュアのI&D(インクルージョン&ダイバーシティ)のジェンダーに関わる活動の一環として、男性の育休について活動しています。育休を取りたい男性も、その管理職も知らないために不安に思ったり誤解したりしていることがあり、それを是正して正しい情報を伝えるため、育休を取得した社員の体験を共有するなど行っています。

 女性が育休を取る際には、管理職や周囲も当たり前に受け止め、評価に影響する印象はありません。ところが、男性が取るとなったときには、周囲からどう思われるかの不安や、評価や昇進に響くのではないかと不安に思う当事者がまだ多いのです。中には、知らないために「デメリットがあるかもしれない」と口にする管理職もいるようです。何カ月も、現場を離れることに不安を持つ男性社員もいます。こうした事情があるために育休取得をためらってしまう人はいるのではと思います。

 実際には、アクセンチュアでは育休前後の働いていた期間が評価の対象となるので、育休取得が評価や昇進に影響することはありません。復帰した社員に対しては、「ワーキングペアレンツ ステップ フォワードプログラム」という制度の一環で、働き方や子育て、キャリアについてカウンセリングをする機会があります。現場を離れていた不安を解消するためのリスキリング(学び直し)の支援も始まりました。これらの制度は育休から復帰した社員は誰でも利用できます。

―― 花田さんもキャリアに対して不安がありましたか?

花田 私の場合はチーム内に育休を取得している人が複数いて、取得しても大丈夫だという空気が醸成されていたので、不安はありませんでした。上司も協力的で「3カ月後から育休を取りたい」と相談したところ、いろいろな関係者を集めて引き継ぎの段取りをしてくれました。これはありがたかったです。

高橋 今は過渡期なので、そんなふうに率先して支援してくれる管理職もいれば、表面的にはOKだけど……という管理職もいるようです。「育休を取得したいと上司に告げたら、OKと言われたが、声のトーンや表情からは納得していないことを感じた」という声を聞くこともあります。

 実は、私自身も自分に子どもが生まれる前はそのような上司だったかもしれません。チームの男性メンバーから「今日は子どもをお風呂に入れる当番なので残業ができません」と言われると、表面上は「そうなんだね」と受け止めても、それが結構大変な育児だということは、理解できていませんでした。自分が育児を経験してからは、素直に共感できるようになりました。今後は育休・育児経験のある管理職も増えていくことで、状況は少しずつ変わっていくと思います。

―― 育休を取ろうか迷っている後輩パパへのアドバイスをお願いします。

高橋 不安があるかもしれませんが、まずは、恐れずに管理職に相談してみてください。ただ、直前に言われると管理職も対処しづらいのでリードタイムは長めに取るようにしたほうがよいと思います。「妊娠の安定期に入ったら早めに」くらいのタイミングがおすすめです。3~5カ月くらいあれば、引き継ぎなどの対策も十分にできるでしょう。管理職に相談したときに、万が一、心ない発言があった場合は、さらにその上の管理職の方などに相談するとよいでしょう。

花田 私たち夫婦は出産前、2人で働いて育児をしていくイメージが持てず、どちらかが仕事をあきらめるか、育児を負担するしかないのではと未来を暗く見ていました。しかし、周囲のワーキングペアレンツを見て、2人でうまく仕事も生活も回していく方法もあるのではないかと思うようになりました。それにはまずは私も育児にコミットし、夫婦で話し合う時間を持とう思ったのが、育休取得のきっかけです。

 実際に育休を取ってみると、仕事や育児へのマインドセットが変わり、どんなことに幸せを感じるかという価値観も変わりました。出産を控え、私たちのように不安を持っている共働き夫婦は意外と多いのではと思います。そういう方たちこそ、夫婦で育休を取得して、自分たちの生活を見直す機会にするとよいのではと思います。

取材・文/福本千秋 イメージカット/PIXTA

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