4年前に1カ月の育休を取得。休める環境づくりを会社も後押し

 金森さんは、アクセンチュアのワーパパとしては先駆者的存在ですが、長女が生まれた9年前は育休を取得しませんでした。「出産予定日が、手掛けていたプロジェクトのリリースの直前だったのです。入社してすぐでしたし、育休を取るという発想はありませんでした」。長女が生まれた直後も休んだのは1日ほど。里帰り出産だったこともあり、産後すぐの日々も仕事にまい進して過ごしたそうです。

 それから5年後、次女が生まれる際は、1カ月の育休を取ることに決めたそうです。「妻の入院中や産褥(さんじょく)期は、長女の精神面も含めた世話を誰かがしなければなりませんが、育休を取得して自分がやらなくては、と自然と感じていました」

 出産予定日の3カ月ほど前に上司に相談したところ「それはいいね」と快く受け入れられ、プロジェクトメンバーからも「復帰を待っています」という好意的な反応がありホッとしたといいます。金森さんが抜ける分、人員は補充されましたが、復帰後も同じプロジェクトに戻る予定で育休に入りました。

 アクセンチュアでは育休に入るときはパソコンをいったん会社に返却するそうです。「パソコンの返却は、残るメンバーに対しては『育休中の社員を頼ってはいけない』、育休を取る社員には『完全に休みに入るように』とのメッセージではないかと感じました。また、育休から復帰する際は人事からカウンセリングを受けられる仕組みもあり、家事や育児を会社が応援してくれていると感じました

公園で次女と
公園で次女と

育休中は3食を担当。復帰後も1カ月は5時に帰宅

 妻と次女が退院後、4人での生活がスタート。妻は新生児である次女のお世話に付きっ切りで、金森さんは家事と長女の育児を担当。普段は料理を作らなかった金森さんも、1日3回の食事を1カ月間作ったそうです。「実は料理は壊滅的にできなかったのですが、家族のためにやらねばと分厚い料理本を買ってきました。あのときはよく頑張ったなと自分でも思います。今ではぎゅうぎゅう焼きが好評です」

 育休を取得したからこそ、印象的な出来事もありました。「育休中は早めに保育園のお迎えに行っていたのですが、まだ明るいので公園に寄り道するんです。すると他にも『早お迎え』の子たちがいて、私も一緒に駆け回って遊びました。平日、まだ日が高い時間にこんなゆったりした気持ちで子どもと遊べるなんて、一生の中でその時だけでしょう。そう思うと感慨深く、貴重な時間を過ごせたと思います」

 1カ月後に職場復帰。すぐに元のリズムには戻さず、最初の1カ月ほどは5時ごろに帰宅していたそうです。アクセンチュアでは有給休暇を時間休として細切れに消化することができます。金森さんもその制度を利用し、早めに帰宅して家事・育児を妻と共に行っていたのです。確かに子育て家庭で一番慌ただしいのは、夕方から子どもを寝かしつける夜にかけて。その時間がワンオペでなく夫婦がそろっているのは、産後間もない妻にとって安心感があったにちがいありません。

当時8歳と3歳の子どもたちとそろって公園遊びに
当時8歳と3歳の子どもたちとそろって公園遊びに

2児の育児は妻との情報共有が鍵

 次女が10カ月で保育園に入園して妻が職場復帰した後は、保育園の送りは金森さん、お迎えは妻が担当という暮らしが始まりました。夕方から夜の育児は基本的に妻が担当しますが、妻に残業や出張があるときは金森さんが交代します。「お迎えに行く日が分かっているときは、職場の共有カレンダーで予定をブロックし、打ち合わせが入らないようにしています。家庭内の共有カレンダーもあり、小学校、保育園、学童、習い事などのすべての予定を共有しています。ホワイトボードも使い、書類提出の予定などをメモしています」

 子どもが熱を出したときの急なお迎えや看病は夫婦間でできるだけ平等になるよう調整しています。「これこそコントロールも予測もできないことですが、お互いのスケジュールを見ながら調整しています。半日単位で交代したこともありますね。症状や受診メモもリアルタイムにやり取りしています」

 金森さんが寝かしつけをする日もあります。しかし子どもが2人いると、なかなか決まった時間には寝てくれないもの。それが金森さんのストレスの元でした。

 「『早く寝てほしい。仕事をしないと』という焦りがあると、子どもに話しかけられても返事がおざなりになってしまうのです。結果的に仕事も思ったように進まず、子どもも悲しい顔をするし、それがストレスで……」

 そんな中、金森さんは子どもの相手をするときはそのことだけを考え、仕事のことは子どもが寝た後に考えるようにしたそうです。「気持ちを切り替えるようにしたのは精神衛生上とてもよく、笑顔で仕事と育児に向き合えるようになりました」。とはいえ、日中の疲れから3日に1回くらいは子どもと一緒に「寝落ち」してしまうことも。「そのときは早朝にすればよいと、フレキシブルに考えるようにしています」

保育園への送りは金森さんの担当
保育園への送りは金森さんの担当