夫婦共働きで子どもを育てることは当たり前の時代。2022年4月には男性育休が義務化され、女性が十分に能力を発揮できる環境醸成のための女性活躍推進法も改正されました。ワーキングペアレンツ(WP)の働きやすさ、子育てのしやすさへの法的な整備は整いつつあります。しかし実際の企業の現場ではどうでしょうか。制度はあっても活用しにくい、会社に貢献できていないのではと不安になると、悩みを抱えている人も多いかもしれません。そこで参考になるのが、外資系総合コンサルティング企業アクセンチュアのWPたちの働き方です。2022年5月27日にオンラインで開催されたWOMAN EXPO2022のセミナー「第3回 Working Parents Forum」から、管理職で出産したママの講演や、先輩WPとプレWPによるパネルディスカッションの様子をリポートします。

管理職ママの育児と仕事のベストバランスは?

セミナーに登壇した6人。左からアクセンチュア ビジネス コンサルティング本部シニア・マネジャーの打尾賢一さん、同本部マネジャーの馴松千聡さん、日経xwoman編集委員の羽生祥子、公共サービス・医療健康本部マネジング・ディレクターの篠田 友さん、テクノロジー コンサルティング本部マネジャーの荒木佐知子さん、ビジネス コンサルティング本部アナリストの福本拓真さん
セミナーに登壇した6人。左からアクセンチュア ビジネス コンサルティング本部シニア・マネジャーの打尾賢一さん、同本部マネジャーの馴松千聡さん、日経xwoman編集委員の羽生祥子、公共サービス・医療健康本部マネジング・ディレクターの篠田 友さん、テクノロジー コンサルティング本部マネジャーの荒木佐知子さん、ビジネス コンサルティング本部アナリストの福本拓真さん

 「第3回 Working Parents Forum『現役ワーキングペアレンツ(WP)からエール! キャリアと子育ての両立で本当に大事なことは?』」は2部形式で開催されました。第1部「管理職で出産! キャリア構築と子育て、私のベストバランス」に登壇したのは、アクセンチュア 公共サービス・医療健康本部マネジング・ディレクターの篠田 友さんです。

<b>篠田 友さん</b><br>2003年に新卒でアクセンチュアに入社。2016年にマネジング・ディレクターに昇格。独立行政法人を中心とした公的機関のクライアントを担当し、業務DX、システム構築、運用、BPOなどのプロジェクトに携わっている。保育園に通う2歳と5歳の男の子の母。夫も同社勤務
篠田 友さん
2003年に新卒でアクセンチュアに入社。2016年にマネジング・ディレクターに昇格。独立行政法人を中心とした公的機関のクライアントを担当し、業務DX、システム構築、運用、BPOなどのプロジェクトに携わっている。保育園に通う2歳と5歳の男の子の母。夫も同社勤務

 篠田さんは入社15年目でマネジング・ディレクターに昇進。同時に第1子を出産しました。管理職で出産というと大変そうに聞こえますが、篠田さんは「仕事の進め方をある程度は自分の裁量で決められるなど、メリットも多かった」と言います。「それまでの仕事で自分のキャリアの軸となるスキルやクライアントとの関係構築もできていたことで、育休から復帰する際にもハードルは高くありませんでした」

 篠田さんは自身のキャリア構築と子育てのベストバランスを次のように考えています。

・子どもがいつも笑顔でいること
・社会やクライアント、会社、同僚に貢献する自分でいること

 この2つを実現するために復帰後は時短で働くなどアクセンチュアの多様な働き方をサポートする制度を活用しています。インクルージョン&ダイバーシティを経営戦略の1つに位置づけ「真のEquality(平等)」実現を目指しているアクセンチュアでは、個人を尊重する価値観も浸透しています。WPが「『週3日・計20時間以上』の短日・短時間勤務」といった制度を利用することは、働き方の選択肢の1つとして当たり前となっていると篠田さんは言います。

マインドセットを変えて、モヤモヤを解消

 それでも復帰後はキャリアの構築にモヤモヤして悩むようになった、篠田さん。

 「出産前ほど気持ちや時間を仕事に向けられないもどかしさがありました。まわりの人の活躍が気になり、自分は会社に貢献できていないのではないかと、自信をなくすこともありました」

 そこで、篠田さんは自身のマインドセットを変えたり、周囲とのかかわり方を見直したりすることで、もどかしさを解消し、自信を取り戻していきます。

【篠田さんのモヤモヤ解消法】

●考え方の変換1 大事なことは何か考え、今できることに着目
「クライアントに貢献するというゴールは変えたくない一方、育児もある今の状態では、貢献の仕方を変えざるを得ません。自分のいる『土俵』で、できることで貢献すればいいと気持ちを切り替え、そのことを周囲にも伝えて理解してもらいました。できることに着目すると、自分を肯定する気持ちが生まれました。小さなことでも得られる達成感が、気持ちの支えに。漠然とした不安ほど、モヤモヤさせるものはありません。不安を具体的な『To Do』に変えたのがよかったのだと思います」

●考え方の変換2 制約は永遠に続くわけではないと時間軸を意識
「大変な状況はあと数年だと時間軸を意識することで、目の前のことに前向きに取り組めるようになりました。そのきっかけは、同僚から『数年でまた変わるものね、待っているね』と言われたことです。子どもがしょっちゅう熱を出して大変だけど、今のそんな時期も終わりが来るのだと思えるようになりました」

●周囲の理解、信頼の確立
「育児中は突発的なことでスケジュールや進め方を調整しなければならないことが頻発します。その時に気を付けているのは、自分からどうしたいかを伝えること、代替案を一緒に提示すること、時には言いにくい『変わってください』ということも、自分から言い出すことです。そして、今日は助けてもらうけど、次は自分がサポートする側になるという意識を忘れないようにしています」

 共働き家庭が多数派の今も、育児は母親がするものという考え方は根強くあります。その考え方はワーキングマザーを苦しめるだけでなく、育児に比重を置きたいワーキングファーザーの壁にもなっています。「それぞれのWPが自分のベストバランスを実現するために何ができるか、自分の経験を生かしながら考えていきたい」。篠田さんはそう話し、第1部の講演は幕を閉じました。