自分の経験談を語ることで、「誰かの育児を後押し」したい

育休取ったらこうなった4
子育てに関するナレッジを発信したいと思った

 小原さんの育休取得時には社内SNSグループ「ファザーリング・タケダ」の情報が大いに役立ちました。その時の経験から、「今後は自分も経験談を発信して、パパたちが育児に参加していく後押しをしたい」と考えるようになったと言います。「一般に『子どもが産まれると大変だよ』という声もありますが、子育てには素晴らしいことも多いので、それを共有していきたいです」

 社内SNSには、行事などでパパが活躍するための知恵もあります。「例えばハロウィーンの時期には子どもと一緒に仮装を楽しんでいるパパの投稿があって、衣装の探し方・作り方など『なるほど、こうすればいいのか!』というナレッジが詰まっているんですよ」

 小原さん自身も、自分の育休経験談などを社内SNSで披露してきました。「すると、『どうやって海外で育休を過ごしたの?』といった質問を受ける機会が増えました。パパの育休はまだ事例も少なく、本人から直接話を聞くのは難しい人もいるでしょう。SNSのような気軽な場所で発信を続けることで、パパたちが育児情報に触れる機会を増やしていくことが大切だと感じています。育児は『手伝うもの』ではなく、『自らするもの』という意識を持って積極的に取り組めるようになるといいですね。パパが育児に関わっていくことで、ママが仕事で活躍できる機会が増えていくのも重要です」

育休を通じて得たもの
多様なパパ・ママ像を見て、視野が広まった

 育休時の経験やその後のSNSでの情報発信を通じて、小原さんは「育児をするパパにもいろんなタイプの人がいるんだな」と視野が広まったのも良かったといいます。「育児をするパパと一口に言っても、子どもとの関わり方や仕事との両立のさせ方など、いろんなやり方があることが実感として分かりました。また、自分が育児に深く関わるようになったことで、仕事先の人と思わぬ育児話で打ち解けられることがあります。その分、人を多面的に見られるようになったと思います」

 娘と2人で積極的に公園などに出かけることで、ママ・コミュニティーへの理解も深まりました。「平日に娘を連れて公園に行っても、まずパパはいません。土日にパパを見かけても、会話に消極的な人が多くてなかなか仲良くなれなくて。そこで、ママたちの集団に入っていくことにしたんです。すると、『面白いやつが来た』という感じで、意外と受け入れてくれたんですね。今まで全く知らなかった世界が見えて、ママたちが感じていること、考えていることを知る機会になりました。ママたちがいかに大変かもよく分かったので、『妻も家の中では少しは落ち着きたいと思うだろうな。じゃあ、僕も頑張ろう!』と考えるきっかけにもなりました」

小原さん夫妻と娘さん(写真は小原さん提供)
小原さん夫妻と娘さん(写真は小原さん提供)
インタビューを終えて、筆者のまとめ

小原さんの話で興味深かったのは、先輩パパに経験談を聞くだけでなく、社内のママ社員や、公園などで出会ったママ・コミュニティーの人々など、妻以外のママたちの意見に耳を傾けている点です。こうして幅広く客観的な情報を集めると、夫婦間でのすれ違いを補う効果がありそうですね。また、人の意見を聞いてどんどん取り入れていく小原さんの姿勢が、子育てにも前向きな影響をもたらしている気がします。こういった「インフルエンサー」が増えていくことが、社会全体で育児のあり方を良い方向に変えていくのかもしれません。

取材・文/杉山錠士